研究課題/領域番号 |
18K02241
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中迫 由実 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (30464275)
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研究分担者 |
横田 隆司 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20182694)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熊本地震 / 被災マンション / 再生プロセス / 専門家 |
研究実績の概要 |
本研究は熊本地震で被災した分譲マンションを対象に、その再生プロセスを調査することで居住者が主体的に災害時にマンションの再生に向けて取り組むために日常から必要となる備えを明らかにすることを目的としている。 今年度実施した調査研究は以下のとおりである。1つは、熊本地震発生から再生方針の検討を継続中である2マンションに対して聞き取り調査および会議への参加により実態把握を行った。再生方針の確定に時間を要しているケースでは、工事内容などの技術的な検討、居住者間の合意形成、買取請求権の発生など法的な問題に加え、費用面の課題がみられた。外部専門家による支援や行政による支援制度の利用により、合意形成が進んでいた。 全壊判定を受けた被災マンションの再生プロセスについて、再生方針(おもに復旧、建替え、敷地売却)の検討、費用の算定、合意形成、スケジュール、専門家との関わりなどに着目し、過去に実施した聞き取り調査の結果や関連の資料をもとに7件の事例を分析した。新耐震のマンションにおいて、当初は復旧を検討していたが、建物の傾斜や杭の損傷の疑いがあるなどの理由により、費用対効果の検討の結果、建物を解体し敷地売却の方針を決定している事例がみられ居住継続と復旧費用とのジレンマがうかがわれた。再生方針として復旧が選択肢となりえるケースでは、費用の算出が必要不可欠であるが、そのためには被害調査の時間も必要となり、事実上の検討期限となる公費解体の申請期限が短期間であることが問題となった。全壊の場合専門家からの支援は欠かせず、合意形成を進める上で、調査した7件のうち、6件でコンサルタントや弁護士などが関与していた。専門家からの支援を受けるにあたり依頼の内容やその時期について引きつづき整理する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は新型コロナ感染症への対応等により、十分な調査を実施できなかったためである。今年度は情勢を踏まえた調査方法等を検討し計画的に遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
地震後の復旧の実態とこれまでの研究成果により明らかになった知見を踏まえ、被災したマンションを対象に防災対策の実施状況に関するアンケート調査を実施する予定である。調査結果を踏まえ、日常から被災時のマンション再生に備えるためのマニュアルの内容を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査が新型コロナ感染症の影響により実施できなかった。今年度は、昨年度実施できなかった半壊、一部損壊等の被災マンションの復旧状況の把握のための調査を行い、結果を踏まえて被災したマンションを対象に防災対策の実施状況に関するアンケート調査を実施する予定である。
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