研究実績の概要 |
空腹時血糖値 80-125mg/dLの範囲では、血糖値が上昇すると糖尿病発症リスクも上昇すると示されている。しかし、空腹時血糖値 70あるいは 80mg/dL未満での糖尿病発症リスクは明らかにされていない。一方、空腹時血糖値 70mg/dLでは心血管疾患(CVD)発症が増加し、CVD発症と空腹時血糖値の関係はJカーブを示すと報告されている。特定健診をベースにした大規模コホートで空腹時血糖値レベルと糖尿病発症リスクの関係を、CVDの有無別に検討した。糖尿病のない特定健診受診者186,749名で、3年間の糖尿病発症の多因子調整オッズ比(OR)を求めた。対象者を空腹時血糖値で8群に分け、85-89mg/dL群を対照とした。全対象者では、 70mg/dL未満(OR 1.80, 95%CI 1.05-3.09)と90mg/dL以上で糖尿病発症リスクが上昇した。CVDなし群は70mg/dL未満(OR 1.96, 95%CI 1.12-3.43)と90mg/dL以上で糖尿病発症リスクが上昇した。CVDあり群では95mg/dL以上で糖尿病発症リスクが上昇した。空腹時血糖値 <70mg/dLは、新たな糖尿病発症ハイリスク群であることが判明した。加えて、空腹時血糖値 <70mg/dLでは、糖尿病発症を介したCVD発症リスクも示唆された。これらは、糖尿病発症予防の新たなる治療戦略につながることが期待された。
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