研究課題/領域番号 |
18K02244
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
岡崎 由佳子 藤女子大学, 人間生活学部, 准教授 (80433415)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸ALP活性 / 難消化性糖質 / 栄養条件 / ラット |
研究実績の概要 |
食餌脂肪の質の違いがオリゴ糖摂取ラットの大腸ALP活性誘導と腸内環境変動に及ぼす影響を検討した。実験動物として4週齢のSD系雄ラットを用いた。実験1では30%ラード食または30%大豆油食を,実験2では30%コーン油食または30%オリーブ油食を用い,それぞれに4%フルクトオリゴ糖(FOS)を添加した飼料を14日間与えた。実験1の結果より,FOS無添加群においては,食餌脂肪の質の違いによる大腸ALP活性をはじめとする各種因子への影響は認められなかった。一方,ラード食ではFOS添加により大腸ALP活性とALP遺伝子(IAP-I)発現および糞中Mucin含量が有意に増加したが,大豆油食ではFOS摂取による影響は認められなかった。さらに,FOS摂取による糞中Bifidobacterium spp.やClostridium coccoidesの割合の変動も大豆油食と比較してラード食の条件下で顕著であった。実験2の結果より,FOS無添加群においては,実験1と同様に食餌脂肪の質の違いによる大腸ALP活性をはじめとする各種因子への影響は認められなかった。オリーブ油食では,FOS添加により,大腸ALP活性が増加する傾向が示されたが有意差は認められなかった。コーン油食ではFOS摂取による大腸ALP活性への影響は認められなかった。大腸ALP遺伝子発現についても食餌脂肪の質の違いに関わらずFOS摂取による影響は認められなかった。また,糞中Mucin含量についても大腸ALP活性と同様の挙動が示された。 以上より,FOS摂取による高脂肪食摂取ラットの大腸ALP活性と遺伝子発現の増加作用は,食餌脂肪としてラードを用いた条件下で顕著であり,Mucinや腸内細菌叢等の腸内環境関連因子についても同様な影響であることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画に沿って,食餌脂肪の質の違いがオリゴ糖摂取ラットの大腸ALP活性に及ぼす影響について検討することができたため。当該年度の研究において,フルクトオリゴ糖(FOS)摂取による,高脂肪食摂取ラットの大腸ALP活性と遺伝子発現の増加作用は,食餌脂肪としてラードを用いた条件下で顕著であることが新たに見出された。また,腸管バリア機能の指標である糞中Mucin含量や,腸内細菌叢についても大腸ALP活性への影響と同様の挙動を示すことが認められた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き,難消化性糖質による大腸ALP活性誘導作用に対する栄養条件の影響について検討を加える。今年度は,食餌脂肪の量の違いがオリゴ糖摂取ラットの大腸ALP活性に及ぼす影響について検討を加える。実験動物としてSD系雄ラットを用い,低脂肪食(5%ラード)あるいは高脂肪食(30%ラード)にオリゴ糖を添加した飼料を与え,数週間飼育する。糞,大腸,小腸(十二指腸,空腸,回腸),肝臓,血清のALP活性を測定する。また,大腸と小腸のALP遺伝子発現解析を行う。腸管Mucinの測定と腸内細菌叢および腸管Tight junction proteinの発現解析を行い,オリゴ糖摂取による大腸ALP誘導に対する脂質の量的違いの影響と,腸内環境関連因子との関連性を検討する。
また,今年度は糖質の質の違いが難消化性糖質の大腸ALP活性に及ぼす影響についても検討する。糖質源としてショ糖とコーンスターチを用い,それぞれの飼料に難消化性糖質を添加して数週間飼育し,大腸ALP活性の測定とALP遺伝子発現の解析を行う。また,腸管Mucinや腸内細菌叢などの腸内環境関連因子への影響についても併せて検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の計画に沿って直接経費を使用した結果,少額(3,950円)が次年度使用額として生じた。 今年度助成金と合わせ,試薬・キット類等の消耗品の購入に使用する計画である。
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