本研究では,難消化性糖質が大腸アルカリホスファターゼ(ALP)をレギュレートする状況を,栄養条件を変えて詳細に検討し,その作用機構を解明することを目的とした。
最終年度に実施した研究では,植物油を用いて,食餌脂肪量の違いが難消化性オリゴ糖摂取ラットの大腸ALP活性に及ぼす影響を検討した。実験動物としてSD系雄ラットを用いた。実験食として低脂肪(5%大豆油)食と高脂肪(30%大豆油)食を用い,それぞれの飼料に4%フルクトオリゴ糖(FOS)を添加した4群を設け,14日間飼育した。その結果,FOS無添加食群では前年度のラード食を用いた検討結果と同様に,食餌脂肪量の違いによる大腸ALP活性をはじめとする腸内環境関連因子への顕著な影響は認められなかった。一方,FOSを添加した場合,そのリスポンスは前年度までの結果と同様にラード食よりも低かったが,低大豆油食と比較して高大豆油食で大腸ALP活性値が高く,腸管バリア機能の指標であるMucin含量も同様の挙動を示した。これらの結果から,オリゴ糖摂取による大腸ALP活性をはじめとする腸内環境関連因子への影響は,摂取脂肪量により異なる可能性が示された。また,コーン油食にラード食と同量の飽和脂肪酸を添加した食餌条件で,FOS摂取によるALP活性への影響を検討した結果,コーン油食と比較してコーン油+飽和脂肪酸添加食で糞中ALP活性値が高い傾向が示された。
近年,腸内環境と健康は密接に関与することが知られてきており,その機能調節に関して食生活の面からも幅広く研究されている。一方で,食品成分の機能性は一定ではなく,人の栄養状態や生理状態により変動することが考えられる。本研究より,難消化性糖質摂取による大腸ALP活性増加作用をはじめとする腸内環境調節作用は,摂取する脂質,タンパク質の質や量といった栄養条件により異なることが新たに見出された。
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