研究課題/領域番号 |
18K02247
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
山村 明子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (60279958)
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研究分担者 |
難波 知子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (80623610)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 明治 / 大正 / 主婦 / 衣生活 / 良妻賢母 / 労働着 |
研究実績の概要 |
研究推進の結果、論文「英国との比較における明治以降の主婦の装い」(日本家政学会誌)を発表した。当該論文では明治末期の日英の主婦の姿を比較検討し、その服装規範から、主婦に求められた役割を明らかにした。一次資料は『婦人世界』(1906年創刊)やイギリスで発行された雑誌、書籍である。主婦の身だしなみに関して西洋への意識では,家族への礼儀として家庭内でも身ぎれいに装うべき、と考え、社交を勧め、他者からの視線を意識し装うことを奨励した。一方、両者の行動と衣生活の相違は家庭での女主人という役割である。日本の主婦にとり家庭は私的領域であり、社会とのつながりの場ではなく、日本の主婦が女主人であることはなかった。日本の良妻賢母像が「家族に従順につかえ、子を育て、教育し、家政を管理」「国家・社会の基礎と認識」できる女性であったことと、粗服を着用し、家事労働着で家庭内労働にいそしむ姿とは一致している。日本の主婦像の本質的な違いがその服装規範から明らかとされた。 次に大正期の成人女性の衣生活の改良に対する主婦の意識、それに対する家族の意識について検討し、口頭発表を行った。成人女性の和装の衣服改良において、三つのシーン:盛装の晴れ着、街に出て消費行動をする外出着、そして家庭内での常着・労働着というカテゴリーが形成された。中でも普段着:家庭内の装いでも身だしなみを整え、外出着のお古とはいえ、お召や大島を着用するという普段着のレベルアップがなされた。レベルアップした普段着で家事労働を行うならば労働着を合わせる必要が生じ、20世紀の主婦像すなわち、和装に割烹着姿へとつながった。さらに、着物の改良に関する検討も行った。主婦像の形成の背景を整理することで、新しい視点を得ることができた。 また、現代の家族関係と衣生活の観点から、母娘世代間のファッション傾向について調査し、ポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに発表した論文でも一部を検討したが、主婦の生活の変化と労働着とのかかわりについては順調に研究が進んでおり、労働着を着用する主婦像(良妻賢母像)に関しては、明治末から大正期の資料を分析することで、生活改善及び消費行動の変容といった新たな視点を見出し、論文として発表する準備(日本家政学会誌投稿中)を進めている段階である。 次に、母親像の形成として、大正から昭和にかけての和装において黒の羽織を着用する習慣に着目し、『主婦之友』『暮しの手帖』を調査し、日本家政学会大会において口頭発表を予定している。この内容に関しては母親像とともに親子の関係性という視点を、衣生活の分析から検討することも目的としている。 また、生活改善運動の進展といった生活の変容という視点から、大正期の婚礼衣装についての研究にも着手している。こちらも日本家政学会大会において口頭発表を予定している。 しかし、当初の計画である、生活空間や生活時間に関する視点からの分析をするにはまだこれらの情報の整理が不足している。今後、これらの作業に着手することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
家庭生活における家族の部屋着、特に主婦の日常着については、これまでの大正期の研究においても若干は取り上げてきたが、今後は重点的に取り組みたい。特に大戦以降の生活の変容と衣生活の意識変化を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で調査用として資料購入を検討したが、適切なものが入手できなかった。そのため予定していた備品費よりも執行額がマイナスであった。次年度も引き続き、有用な資料の購入を検討する。
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