研究課題/領域番号 |
18K02251
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
金田 直人 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 講師 (10507148)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 仮撚加工 / 繊維機械 / サージング / 撚角度 / 見かけ糸太さ |
研究実績の概要 |
本研究では,衣服等の繊維製品に用いられる仮撚加工糸を対象とし,加工時の糸形態の挙動について,汎用仮撚加工機械で容易に取得可能なオンライン型サージング検査システムを開発することを目的に,「延伸・加熱・加撚・冷却部」のサージング現象(糸の不安定挙動)の発生メカニズムを調査している. 平成31年度では,サージング発生のメカニズムを解明するために,仮撚加工の必要条件について加撚長さに注目し,サージング発生に影響を与えているかを確認した.また,加工中の加撚張力の維持にはディスク構成も影響することから,平成30年度に引き続き最適なディスク構成の検討を行った.加えて,万能試験機を導入し,加工糸の引張強さ・伸縮伸長率・伸縮弾性率を測定し,各生産条件パラメータが糸形態・糸物性に与える影響について検討した.ここで,比較的安価な万能試験機を予定していたが,測定したい繊維の測定範囲が,予定していた試験機では測定不可(ストローク不足)ということが判明したため,令和2年度予算を前倒し申請し,試験可能な万能試験機を導入した. 平成31年度の結果,加撚長さを短くすることは,加撚効率の向上によって糸に十分な加工が施され,サ ージングの抑制に繋がることが明らかとなった.また,サージングが発生すると,撚角度の低下および見かけ糸太さの増加が確認され,糸が加工されていないことも再確認でき,糸物性の引張強さが低下していたことから,サージング発生による糸への加工が不十分であることを関連付けることができた.また,ディスク構成の検討では,ディスク構成と糸物性を比較した結果,加工効率の高いディスク構成が糸物性も良く,サージングが発生しにくいことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度では,サージング検査システムを用いて,サージングの発生要因を解明することを目標としていた.研究実績より,仮撚加工機の加撚長さについて注目した結果,加撚長さが短いと単位長さあたりの加撚が多くなり,結果的に加工効率の向上に伴い,サージングが発生しにくいことが明らかとなった.また,ディスク構成について注目した結果,加工中の加撚張力を維持するためのディスク構成は,ディスク形状および材質が摩擦力の大きいものにすると良いことが明らかとなった. これまでの結果より,サージングの発生メカニズムを解明していくためには,加工要素の細分化によるサージングへの影響の検証と加撚張力を維持できるディス構成の検討が必要であることが明らかとなった.しかし,発生メカニズムの厳密な解明には至っていないため,引き続き実験的な検証が必要といえる. 以上より,本研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究実績より,サージングの発生メカニズムとして,加工効率の維持・向上が重要であり,加工条件およびディスク構成についての最適化を引き続き検討していく必要があるといえる. そこで令和2年度は,仮撚加工の必要条件について,加熱と冷却を取り除いた加撚のみを独立した加工条件として捉え,サージング発生にどのような影響を及ぼすか検証する.加えて,これまで加工要素とディスク構成を別々の観点からサージングへの影響を検討していたが,今後は「加撚」に注目していくため,撚りを最も付与できるディスク構成もあわせて検討してく. また平成31年度では,実験結果をもとに,糸形態シミュレーションを実施する予定であったが,「加撚」のみの実験的検証にて発生メカニズムを把握した後,糸形態シミュレーションの実施を予定している.そして,仮撚加工法の最適生産条件の選定および従来法に対する最適生産条件の優位性の検証を実践していく.
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