本研究では,汎用仮撚加工機械で容易に取得可能なオンライン型サージング検査システムを開発することを目的に,モデル機を用いて「延伸・加熱・加撚・冷却部」のサージング現象(糸の不安定挙動)の発生メカニズムを調査した. 平成31年度での成果として,仮撚加工機の加撚長さを短くすることやディスク構成の検討によって加撚効率の向上が見られ,サージングの抑制に繋がることが確認することができた.これは万能試験機を用いた糸物性の結果からも向上がみられたことから,検査システムの優位性も実証することができたといえる.しかしながら,サージングの発生要因の厳密な特定には至っておらず,令和2年度で引き続き実験的な検証によって発生メカニズムの解明を目指すことが必要となった. そこで令和2年度では,仮撚加工機における加工条件である,撚りに関する速度比と,糸張力に関する延伸比に着目し,各条件をそれぞれ一定にした場合でのサージングの発生状況について検査システムを用いて糸形態と糸張力の観点からを検証した.その結果,速度比一定については,延伸比の変化に伴い加撚張力が変化していくため,低延伸比になるに従いサージングの発生が顕著であった.延伸比一定の場合では,速度比の変化によって加撚張力の増減は大きく見られないが,サージング発生時で速度比を増加させると僅かながらでも加撚張力が増加することで,サージングの抑制が見られた.これよりサージングは,施撚部でのディスクユニットから付与する加撚による加撚張力がサージングの発生状況に起因していることが明らかとなった.この加撚張力は糸とディスクの接触状態に影響する把持力に比例しすることから,把持力の確保がサージング抑制のために重要ということがわかった.
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