研究課題/領域番号 |
18K02255
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
波多野 直哉 岡山大学, ヘルスシステム統合科学研究科, 特任講師 (10332280)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 質量分析 / ペプチド / 皮革 / 動物種鑑別 |
研究実績の概要 |
動物革製のかばん・衣料・手袋については、家庭用品品質表示法により雑貨工業品品質表示が定められ、これを一部でも使用したものには、動物種の鑑別が必須とされている。近年カシミヤ製品の不当表示が発覚したことから、消費者保護の観点からこの法律の厳格な適用が求められている。当初は革製品の皮革に含まれるDNAを用いたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)での鑑定を想定していたが、革の加工処理の過程でDNAが激しく損傷を受けるため、PCR法での鑑定が不可能であることが判明した。そのため、顕微鏡観察による鑑定が主となっているが、国内で生産される革製品だけでも、年間150万点を超え(平成27年度)、簡便かつ科学的な鑑定手法の確立が急務となっている。そこで、皮革に含まれるタンパク質を抽出し、酵素消化したペプチドを用いて、質量分析計による皮革製品の動物鑑定法の確立を目的とする。 今年度は「動物種に特異的なペプチドの探索」を実施した。表示対象となる動物のうち流通量がほとんどを占める6つの動物種(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ)について、前年度に最適化した実験条件をもとに、動物革製品よりタンパク質を抽出し、酵素消化によりペプチドを作成し、これを用いて質量分析計で解析した。 質量分析計によるタンデムマス解析により、6つの動物種について各6種類以上の革製品のサンプルを用いてペプチドのアミノ酸配列を決定した。主に3種類のコラーゲンタンパク質由来のペプチドが検出され、数十種類のアミノ酸配列を検出できた。 コラーゲンタンパク質は、生物にとって重要なタンパク質であり、進化的によく保存されていることから、各動物種に特異的なペプチドを検出することは困難であると危惧されたが、動物種間でアミノ酸配列が異なるペプチド部分を16箇所決定することができた。この中には、特定の動物種に固有の「動物種特異的なペプチド」も含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目的であった「動物種に特異的なペプチドの探索」を実施した。各動物種の皮革製品をサンプルとした検討の結果、質量分析計を用いた解析により、動物種間でアミノ酸配列が異なるペプチド部分が16箇所検出された。これらのペプチドを複数組み合わせることにより、より確実な動物種鑑定が可能と考えられる。よって、当初の計画通り、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題として、動物種間でアミノ酸配列が異なるペプチド部分を複数組み合わせて判定する「動物判定システムの開発と検証」を行う。配列に違いのあるペプチド部分だけを集めて統合した人工的な、各動物種に対応するアミノ酸配列のリファレンスデータを作成し、これを参照することで該当する動物種をスコア化して判別する構築する。 検証用のサンプルを準備し、本研究で最適化したサンプル処理法に基づき、質量分析計を用いて解析し、ブラインドテストによりこの動物鑑定システムの評価を行う。将来的に広く一般的に使用できるようにするため、簡便かつ堅牢で精確なシステムを構築し、鑑別の正答率100%を目標とする。
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