研究課題/領域番号 |
18K02258
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
関戸 啓子 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (90226647)
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研究分担者 |
竹市 仁美 京都華頂大学, 現代家政学部食物栄養学科, 教授 (00469272)
植村 小夜子 佛教大学, 保健医療技術学部, 教授 (10342148)
堤 かおり 園田学園女子大学, 人間健康学部, 教授 (20327480)
關戸 啓人 京都大学, 国際高等教育院, 特定講師 (40718235)
原田 清美 京都府立医科大学, 医学部, 准教授 (80712934)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 食事の実態 / 闘病記 / がん患者 / 緩和ケア |
研究実績の概要 |
終末期にある療養者のための食事ガイドラインを開発するために、在宅の療養者を支えている専門職に対して、「終末期にある療養者の食事」の実態と関連要因をつかむために実施するアンケート用紙を作成したが、プレテストの段階で、回答のしにくさが指摘され見直すことにした。特に、実態をある程度把握した上で、選択肢を設定する必要性に対する指摘が多く、闘病記や事例研究を分析して実態把握に努めた。 まず、患者の闘病記をテキストマイニングの手法を用いて分析することによって、終末期にあるがん患者の食事の実態と意味を検討した。闘病記を分析した結果、終末期のがん患者は、口から食べられることに希望を見出し、嚥下困難や疼痛があっても、何とか口から食べることのできる食事形態を模索していることがわかった。また、食べることができる一日一日に感謝し、食事は最期に残された喜びともなっていた。食は生きている実感をもたらし、生きる希望をつなぐ役割を持っていることが示唆された。終末期にあるがん患者にとって、食事は重要な意味を持っていることから、少しでも苦痛なく、食事ができるような支援が必要であることがわかった。 さらに、緩和ケアを受ける患者の食事に関連した事例研究の抄録を、テキストマイニングの手法を用いて分析することによって、食事の実態と意味を検討した。クラスター分析の結果、緩和ケアを受ける患者の食事に関する記述内容は5つのクラスターに類型化された。「食事に対するチームアプローチの重要性」「状態に合わせた食事の提供」「患者・家族にとっての食事の重要性」「食べることは希望」「家で食事できる意味」と解釈した。住み慣れた場所で、患者を含めた家族で食事することが生きる希望につながっていると思われた。 以上の結果をふまえて、アンケート用紙の修正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2019年度は、在宅の療養者を支えている専門職に対して、「終末期にある療養者の食事」の実態と関連要因をつかむためにアンケートを実施し、「終末期にある療養者のための食事ガイドライン(案)」を作成する計画であった。しかし、アンケート用紙を作成しプレテストを行った段階で、アンケート用紙への回答のしにくさが指摘され、アンケート内容の見直しを行った。がん患者の闘病記や緩和ケアを受けている患者の事例研究を分析して実態把握に努めた。さらに、この分析結果を学会で発表することによって、助言をもらったり情報交換を行った。それらの結果をふまえて、アンケート内容を見直し、修正して再度作成を行った。その後、アンケート調査実施の準備をすすめていたが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、訪問看護師など在宅の療養者を支えている専門職に対する調査は難しいと考え、実施を保留した。そのため、2019年度の目標であった、「終末期にある療養者のための食事ガイドライン(案)」を作成するまでに至ってなく、研究は遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
訪問看護師など在宅の療養者を支えている専門職に対する調査が実施可能な状況になり次第、アンケート調査を実施する。アンケート結果を分析する。その間、追加で闘病記や事例分析、聞き取り調査などを行い、「終末期にある療養者のための食事ガイドライン(案)」の方向性や骨子となる部分は、研究者間で検討し、ガイドラインの大枠については議論を進めておく。それにアンケート調査結果を入れ込んで、「終末期にある療養者のための食事ガイドライン(案)」を作成する。 作成した「終末期にある療養者のための食事ガイドライン(案)」は当事者等に示し、評価やアドバイスをもらいながら最終的に完成させる。 完成した「終末期にある療養者のための食事ガイドライン」は、関連する学会で発表を行う。論文としても投稿できることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していたアンケート調査が実施できなかった。そのため、アンケート調査実施時に必要となる郵送費、その後の統計処理用に購入予定であった統計処理ソフトを購入していないために、次年度使用額が生じた。この残額は、2020年度にアンケート調査を実施するため、郵送費と統計処理ソフト購入に使用する。さらに2020年度には、「終末期にある療養者のための食事ガイドライン」を完成させるために、計画通り、ガイドライン作成のための打ち合わせ旅費と、その有用性確認のための現地調査用旅費、資料整理のため人件費を使用する。「終末期にある療養者のための食事ガイドライン」完成後には、研究成果の学会発表旅費、投稿のための英文校正料、投稿料、論文印刷代も使用する予定である。
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