免疫抑制剤の標的酵素であるカルシニューリン(CN)のホスファターゼ活性を阻害する物質として、アクリロニトリルブタジエンゴム中から同定した直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)は、洗濯用合成洗剤の主要成分として我々の生活に密接に関係する陰イオン界面活性剤であり、また環境汚染物質としても知られている。本研究では標準品のC12-LASと市販の陰イオン界面活性を使用して各検討を行った。 研究の成果としてC12-LASがリコンビナントヒトCN活性を阻害すること、2021年度の研究ではC12-LASがヒト白血病T細胞Jurkat細胞において、転写調節因子を介してIL-2 mRNAの発現を抑制し、細胞のIL-2 産生を低下させることを見出した。また、C12-LASは、低分化型ヒト胃癌細胞株だけではく、中分化型および高分化型の胃癌細胞株においてPGE2産生を抑制することを明らかとした。 次に市販の陰イオン界面活性剤(硫酸エステル塩(6種類)、スルホン酸塩(7種類)、脂肪酸塩(1種類))を用いてヒト肺線維芽細胞WI-38、WI-38 VA13およびJurkat細胞に対する毒性作用を検討したところ、細胞増殖50%阻害濃度(GI50)はそれぞれ数十から数百ppmであり、例えば同じベンゼンスルホン酸塩であっても化学構造の違いによってGI50は異なることが示された。また3つの細胞間において、各陰イオン界面活性剤のGI50には相関が見られた。一部のスルホン酸塩についてJurkat細胞のIL-2 産生の影響について検討したところ、毒性のない濃度でIL-2 産生の低下を認めた。
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