研究課題/領域番号 |
18K02262
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
妙田 貴生 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (80372986)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精油 / マスキング作用 |
研究実績の概要 |
本研究は、和ハッカ「ほくと」の脱メントール精油およびその抽出残渣のもつ新たな機能性として、消臭効果と抗菌作用に着目して化合物レベルで寄与成分の特定を目指すものである。 当該年度は、脱メントール精油では悪臭成分に対する消臭スペクトルの作成と精油抽出残渣の悪臭の対する消臭活性について検討した。前者の検討では、7種類の悪臭成分に対する精油の消臭効果を官能評価した。その結果、吉草酸およびイソ吉相酸に対してのみ効果を示すことを明らかにした。そこで、消臭作用の特徴を調べるために、試料液をバイアルに詰めてSPME法により気相中の香気成分を調べた。その結果、悪臭成分および精油成分共に気相中の濃度がコントロールと同程度であったことから、精油の有する消臭効果は人の感覚的なマスキング作用であると考えられた。なお、マスキング効果にはメンタン骨格を有する成分のうち、とくにpulegoneが主要な寄与成分であった。後者では、精油抽出残渣の50%アセトン抽出物を調製し、それを酢酸エチル画分と水画分に分画して7種類の悪臭成分に対するマスキング効果の有無を前者と同様の方法で評価した。その結果、水画分を添加した全ての悪臭成分は、コントロールに比較して統計的有意にマスキングされていることが明らかとなった。そこで、前者と同様の方法でマスキング作用の特徴を調べたところ、水画分を添加した試料液では、悪臭成分の揮発が有意に抑制されることが分かった。したがって、水画分の持つ消臭効果は精油とは異なり、物理的に悪臭成分の揮発を抑制することによると考えられた。 以上の結果は、学会発表および学術雑誌の報文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画通りに研究は進捗できており、得られた結果も学会発表および報文として公表できた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通りマスキング寄与成分の特定と作用機作、および虫歯菌に対する抗菌作用について研究を進めていく。 具体的には、各種クロマトグラフィーを駆使して活性本体となる化合物の単離・同定を試み、GC-MSおよびNMRを活用して作用機作を解明していく。抗菌作用に関する研究では、寄与成分として明らかにしているスダチチンに加えて、その類縁化合物の存在も明らかにしていることから、それらの単離・同定を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、当該年度において当初計画していた消耗品(分析カラムおよび有機溶媒)の購入費用が低く抑えられたことと、その差額を次年度に購入予定である備品(分取HPLC用検出器)に充てることを計画したことによる。したがって、次年度使用額は備品の購入費に計上する。
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