研究課題
本研究は、和ハッカ「ほくと」の脱メントール精油およびその抽出残渣の持つあらたな機能性として、消臭効果と殺菌作用に着目して化合物レベルで寄与成分の特定を目指すものである。当該年度は、精油抽出残渣にある抗菌成分の特定と消臭スペクトルについて検討した。前者の検討では、すでに構造を明らかにしているsudachitinに加え、未同定であった2化合物について解析した。その結果、それぞれsudachitinの類縁化合物であるdemethoxysudachitinとchrysoeriolであることを明らかにした。後者に関しては、精油抽出残渣より50%アセトン抽出物を調製し、それを水と酢酸エチルで分配してそれぞれのイソ吉草酸に対する消臭活性を官能評価で測定した。その結果、両画分ともに消臭活性を有することが認められ、とくに水画分において非常に強いことがわかった。そこで、この画分における消臭スペクトルを明らかにするために、悪臭の代表7成分に対する消臭活性を測定した。その結果、全てに対して活性を示し、とくに、アンモニア、メチルメルカプタン、酪酸、およびプロピオン酸に対する効果の強いことが明らかとなった。そこで、これらの効果が感覚的なマスキングなのか、あるいは物理・化学的な効果による消臭なのかをSPME法により調べた。その結果、いずれの悪臭成分も水画分の添加により気相への揮発が抑制されたことから、この消臭効果は物理的、あるいは化学的な作用によると示唆された。なお、活性寄与成分の特定を試みるべくクロマトグラフィーを繰り返したところ、かなり極性の高い成分であることがわかったが、化合物の同定には至っていない。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに研究は進捗できているが、活性成分の構造解析だけが難航している。
今後は、消臭活性成分の構造解析に注力し、さらに作用機作について詳細に検討する。具体的には、クロマトグラフィーを駆使してまずは活性本体となる化合物を単離する。その後、LC-MSとNMRを活用して構造を明らかにしていく。作用機作は、NMR分析での検討を予定している。
次年度使用額が生じた理由として、当該年度で購入計画していた備品(分取HPLC用検出器)の価格が低く抑えられたことと、この差額分を分析で新たに必要となる消耗品(分取HPLC用カラム、HPLC用カラムおよび有機溶媒)の購入費用に充てることを計画したことによる。したがって、次年度使用額は物品費に計上する。
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