本研究の最終目標は、現在流通している様々な飲食品の終末糖化産物(AGEs)形成に及ぼす因子を解明し、AGEsの低減に向けた方策を講じることである。 前年度までの検証において、食品中AGEsの形成には原材料のみならず製造加工や保管状況など様々なファクターが関わっており、実際の食品を用いて因果関係を解明することが想定以上に困難であったため、2020年度はモデル系に絞った検証を試みた。AGEs形成が懸念される調製粉乳および液体ミルクを模した形態の異なるモデル系を用いて、糖の残存量、褐変度、およびメイラード反応における初期(アマドリ化合物)・中期(α-ジカルボニル化合物(α-DCs))・後期段階生成物(AGEs)まで広範に評価を行い、同反応に及ぼす各種糖質の影響の解明を試みた。その際、α-DCsおよびAGEsについては分析種を増やし、より詳細なメカニズム解析を行なった。 結果、糖質の種類ごとにα-DCsおよびAGEsの特異的な形成が見られたことから、これら分析種をマーカー物質として加工食品の品質評価に応用できる可能性が見出された。また、これまで解析がなされなかった特定のAGE種の顕著な増加が確認されたことから、モニターするAGE種の妥当性について今後検証する必要があると考えられた。さらに、加熱時における形態がα-DCs形成に顕著に影響を及ぼすことが明らかとなった。糖質とタンパク質を多く含む食品においては、加工形態に応じて糖質の種類を選択し、糖質の安定性を高める方策を講じることがAGEs低減に繋がると考えられる。
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