研究課題/領域番号 |
18K02265
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
四元 博晃 西九州大学, 健康栄養学部, 准教授 (50321310)
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研究分担者 |
柳田 晃良 西九州大学, 健康栄養学部, 客員教授 (00093980)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ムキタケ / メタボリックシンドローム / 栄養機能性成分 / キノコ類 |
研究実績の概要 |
日本を含む先進国では、メタボリックシンドロームの増加により医療費の負担など大きな社会問題となっている。この予防・改善には食事への機能性成分の導入が重要であると考えられている。キシメジ科ワサビタケ属に分類されるキノコの一つにムキタケがある。これまでに我々は、ムキタケには脂肪肝・肝臓障害改善作用や抗メタボリックシンドローム作用があることを認めている。しかしながら、ムキタケ中のどの成分がこれらの生理作用に有効に機能しているかは明らかになっていない。そこで本研究では、ムキタケ中の栄養機能性成分の解析とその作用機序の解明を目的としている。 これまでに、ムキタケには脂肪酸類をはじめどのような成分が含まれているかについて明らかではない。そこで2018年度は、ムキタケ可食部に含まれるさまざまな成分を知るために、メタボローム解析を行った。まず、LC-TOFMSを用いたムキタケ可食部のメタボローム解析の結果、91種類の化合物が確認された。この中で脂肪酸類では、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、などが確認された。その他には、リン脂質類やアシルカルニチン類、フィトステロール類、スフィンゴ脂質類なども含まれていることが認められた。次にCE-TOFMSを用いたメタボローム解析の結果、267種類の化合物が確認された。これらの化合物の中には、グルタミン酸やアスパラギン酸、オルニチンなどのアミノ酸類や核酸関連物質、糖代謝関連物質などが含まれていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度の当初の予定としては、ムキタケ中の成分を水溶性成分と脂溶性成分に分画し、さらに分子量サイズで細かく分画して、ヒト肝由来培養細胞HepG2細胞を用いてムキタケ中の栄養機能性成分のスクリーニングと評価を行う予定であった。さらに、これで得られた結果を基に抗メタボリックシンドローム作用を示すことが考えられる機能性成分を単離・精製し肥満糖尿病モデル動物を用いて生体内での機能性について検討する予定であった。しかしながら、スクリーニングをはじめようとした際、限られた時間と助成金を効果的に効率良く使用するために、ムキタケの未知の成分の中でどのような化合物から評価を行うべきか判断に迷いが生じた。また、ムキタケに含まれる糖質類やアミノ酸類、脂肪酸類などの基本的成分も明らかになっていなかった。そのため、2018年度はまずはじめにメタボローム解析によりムキタケ可食部に含まれる化合物について解析を行った。この結果より、現在はムキタケ中に確認された358種類の化合物の中から抗メタボリックシンドローム作用が期待できる化合物を検討し、スクリーニング評価と動物実験をはじめる準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
我々はこれまでに、ムキタケ中の熱水抽出物には脂肪肝・肝臓障害改善作用があることを、またエタノール抽出物には抗メタボリックシンドローム作用があることを認めている。2018年度はムキタケ可食部に含まれる化合物についてメタボローム解析を行った。その結果、LC-TOFMSを用いたムキタケ可食部のメタボローム解析によって、91種類の化合物が確認された。また、CE-TOFMSを用いたメタボローム解析によって、267種類の化合物が確認された。そこで2019年度では、まずこれらの結果について、さらに詳細に検討を行い、脂肪肝・肝臓障害改善作用をもつ可能性が考えられる水溶性の化合物と、抗メタボリックシンドローム作用をもつ可能性が考えられる脂溶性の化合物について選び出す。さらに、選び出された複数の化合物について、ヒト肝由来培養細胞HepG2細胞を用いてムキタケ中の栄養機能性成分のスクリーニングと評価を行う。評価では、脂質代謝関連遺伝子やメタボリックシンドローム関連遺伝子についてリアルタイムRT-PCR用サーマルサイクラーやマイクロプレートリーダーなどで分析する。この評価によりスクリーニングされた化合物を分離カラムを用いて単離・精製し、肥満糖尿病モデル動物を用いて生体内での機能性について検討する予定である。生体内での機能性の評価については、血液の生化学検査、内臓脂肪重量、肝臓の脂質量や脂質代謝関連酵素・遺伝子発現などを測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、2018年度にムキタケ中の栄養機能性成分をヒト肝由来培養細胞HepG2細胞を用いてスクリーニングし、さらにこれにより評価された機能性成分を分離カラムで単離・精製し肥満糖尿病モデル動物を用いて生体内での機能性について検討を行う予定であった。しかしながら、2018年度はムキタケ中の化合物をメタボローム解析により調べるまでであったために、モデル動物やその飼料、遺伝子関連測定試薬、血液生化学検査用試薬、分離カラム、その他実験用消耗品類の購入ができず、次年度使用額が生じた。 2019年度では、メタボロム解析の結果を基にヒト肝由来培養細胞HepG2細胞での機能性成分のスクリーニングと、さらにこれで得られた結果を基に肥満糖尿病モデル動物を用いた動物実験を実施する予定である。また、機能性を評価するにあたっては、脂質代謝関連酵素や遺伝子、メタボリックシンドローム関連遺伝子、血液生化学検査などを行う。そのために、2019年度分の助成金と合わせて効果的に助成金を使用する。
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