研究課題/領域番号 |
18K02268
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
奥西 智哉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, 上級研究員 (20353964)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大麦 / ゲル / グルカン |
研究実績の概要 |
「大麦β-グルカン」は水に溶ける食物繊維の一種で、水に溶けると水分を吸収してゼリー状に固まる性質がある。ゼリー状態となった大麦β-グルカンは、胃の中にある食べ物を包み込んで、消化器官をゆっくり移動するため、「糖質の吸収を抑える」作用をもつ等の機能性に着目されている。大麦はこのような背景のもと従来から麦飯として利用されてきた。しかし新たに大麦に関しても粉体食利用への提案が本課題の主旨であり、穀物ゲル転換技術により高付加価値化にむけた技術展開を目指すものである。 ゲル化は水を吸わせた大麦に熱を加えることにより、主成分であるデンプンを変化させることである。デンプンの糊化度合の評価は1)BAP法等の酵素を用いた方法、2)示差走査熱量測定(DSC)等が用いられてきた。しかしながらこれらの手法は十分にゲル化されたものを評価することは困難である。一方、RVA では一般的に粉末穀物試料を用いて評価がされているが、ゲル化後に粉末化することでゲル化度合を評価できる方法を開発した。具体的にはゲル化物を溶媒中で素早く分散させることにより、デンプンゲル化のさらなる進行を止めつつ、溶媒の脱水作用でデンプン老化も同時に防ぐものである。 RVA解析結果では、デンプン結晶に由来するピークが未処理の大麦粉では見られたが、ゲル化処理によりピークが見られなくなった。また、そのピーク減少程度はゲル化処理時間に依存していた。 大麦ゲル化物をパン材料として用いる場合、製パン時の生地物性が品質に大きな影響を及ぼすことをこれまで明らかにしてきた。ゲル化程度を評価できることにより生地物性制御が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大麦の特徴はβグルカンの機能性であるが、主成分はデンプンである。デンプンは加水・加熱によってゲル化するが、本課題においては高速撹拌によりそれを成し遂げるものである。ゲル化によってデンプンは完全あるいは部分的に結晶領域を失うが、それを簡便に評価する方法を開発し、加工性研究の基礎と出来た。
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今後の研究の推進方策 |
任意のゲル化程度の大麦ゲル素材を作成することが可能になった。当初計画通り、様々な条件で作成した大麦ゲルを任意の割合で小麦粉に混合させ、大麦ゲルパン生地の特徴やパン特性を調査することで、大麦成分および大麦ゲル特性がパンの膨らみ等に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度と2年度にまたがってゲル評価技術開発を行う予定であったが、初年度に重点的に行った。一方、製パン評価については2年度に重点化する。人件費(製パン補助者)の予算額に対する比重が高い。
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