研究課題/領域番号 |
18K02269
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研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
岡部 善平 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30344550)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 後期中等教育 / カリキュラム / 職業教育 / コンピテンシー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、後期中等教育での職業教育が学習者の能力形成、とくに特定の職業的スキルに限定されない教科横断的な能力の形成に対してもつ効果について実証的に検討することにある。2021年度の研究実績の概要は、以下のとおりである。 第一に、2019年度調査対象校における追加調査、すなわち「身に付けさせたい能力」の設定状況、生徒の学習活動に対する評価方法の現状、職業科目と普通科目との連携の現状と課題に関する聞き取り調査と資料収集の遂行にあたった。しかし、新型コロナウイルス感染予防措置および研究代表者の長期海外研修に伴い当初の予定を変更し、「職業教育を通したコンピテンシーの形成過程」に関する理論的な考察に研究活動の焦点を切り替えた。具体的には、職業教育における理論的知識と専門的知識の定義および位置づけについて、英国の教育社会学者B. Bernsteinの「知識構造」概念、英国とカナダの職業教育研究者A. Bathmaker、C. Winch、L. Wheelahanによる知識とスキルの概念整理を下敷きにして、とくに中等教育段階の職業教育では理論的知識と一般的スキル(コミュニケーション能力やエンプロイアビリティ)が混同される傾向にある点、「知識」の捉え方について利害関係者間のコンセンサスが不足している点を確認した。 第二に、職業教育の改善と高度化を目的とした試みの先端的な事例として、英国で2020年より段階的に導入が進められている中等教育段階の職業教育資格、Tレベル(T Levels)に着目し、その現状と課題を各種行政文書および公表されている統計データに基づいて分析した。この分析は現在も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記「研究実績の概要」で言及したTレベルを含む職業教育改革の実地調査のため、2021年10月より1年間にわたる英国での研修の機会を得たが、新型コロナウイルス感染拡大の影響下での渡航ということもあり、渡航手続に想定以上の時間を要した。さらに、渡航後の研究環境の整備についても難航したため、研究のとりまとめ作業への着手が著しく遅れることとなった。したがって、現在までの進捗状況を「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
「職業教育を通したコンピテンシーの形成過程」に関する理論構築とその精緻化を図るため、職業教育改革に関する内外の研究の知見を再検討する。その際、英国の職業教育カリキュラム研究者であるHuddersfield大学のKevin Orr教授に、理論構築に向けて協力を仰ぐ。Orr教授は本研究に関わる情報交換を通じた知己であり、すでに協力体制を構築済みである。 また、上記「研究実績の概要」で示した調査対象校への分析結果のフィードバックの過程で聞き取り調査と追加の資料収集を実施し、職業教育を通した能力形成の現状と課題をより詳細に検討する。ただし、新型コロナウイルスの影響に伴う、調査対象校の年間予定の変更等を考慮する必要があるだろう。そのため、調査対象校と連絡をとり、状況を把握しながら、慎重に議論を重ねていきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度への繰越金が発生した理由は、新型コロナウイルス感染予防措置の影響から調査対象校での聞き取り調査および追加の資料収集の継続的な実施ができなかったため、研究代表者の海外研修に伴い渡航手続に著しい時間を要したため、また全国専門学会の中止あるいはWeb開催により研究成果の発表に必要な旅費を使用していないためである。状況を見極めながら追加の聞き取り調査、資料収集を実施する予定であり、繰越金はそのための国内旅費、必要資材の購入等に使用する計画である。
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