研究課題/領域番号 |
18K02270
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
石田 雅樹 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (10626914)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジョン・デューイ / 市民性教育 / social efficiency / ナショナリズム |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績としては、前年の研究を踏まえつつ、ジョン・デューイの市民性教育(シティズンシップ教育)論について着実な研究を行い研究成果を上げることができた。 第一に、デューイの「市民性教育」論について、「良き市民であること」good citizenship の「良さ」について、デューイがefficiency (効率性、有能さ)という言葉で論じていることに注目し、その意義と限界を明らかにした。デューイが efficiency という言葉によって、進歩主義教育における「社会的効率性」を批判し、デモクラシーを支える「市民性教育」論を展開していることを示した。研究成果としては、論稿「「良き市民であること」good citizenship の「良さ」とは何か――ジョン・デューイ「社会における有能さ」social efficiency について――」(『宮城教育大学紀要』 第54巻, 37-48)、また学会報告「「良き市民であること」good citizenship とはどのようなことか?――ジョン・デューイ「市民性教育」論再考」(日本政治法律学会、東北学院大学、11月2日)として公表した。 第二に、デューイの市民性教育論がナショナリズムとどのような関係にあるか、とりわけ第一次大戦でのアメリカ・ナショナリズムの高揚という文脈におけるデューイの位置づけを検証した。これまでの研究では看過されてきたこのデューイ「市民性教育」論におけるナショナリズムの問題について、「「市民性」を陶冶する教育、「国民性」を育む教育――ジョン・デューイにおけるナショナリズムと教育」として論稿に纏めることができた。この論稿は現在学会誌に投稿中であり、査読者による査読が行われている。受理されれば公開される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H31年度(令和元年度)の研究計画として予定していたデューイ「市民性教育」論について、二編の論稿の執筆と一つの学会報告という形で研究成果を上げることができた。また当初予定していた内容に加えて、H32年度(令和2年度)に想定していた「社会改造主義」social reconstructionism に関する研究も、H31年度にある程度前倒しで取り掛かることができた。以上の点から、概ね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
デューイにおける「教育の公共性」について、当初の年度計画に掲げた「教育評価」の点から研究を行う予定である。またそれに先立ち、今年度の研究で明らかになった efficiency (効率性・有能さ)という論点について、それが「社会改造主義」とどう関わるのか検証を行う。それに加えて、当時のソビエト型教育に対するデューイの評価も新たに重要な論点として浮上したが、それも合わせて考察を行う。つまり、デューイにおける新たな「教育の公共性」の模索について、一方においてアメリカにおける「進歩主義教育」と「社会改造主義」という文脈での位置づけを検証すると共に、他方ではそれがソビエトを典型とする国家主導型の革新教育とどのような関係にあったのかを考察することで、その内実を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初参加予定していた公開研究会(お茶の水女子大学附属小学校公開研究会:第82回教育実際指導研究会)が、新型コロナ感染症対策で中止となり、そのために計上していた旅費が使用できなくなった。次年度に繰り越し計上し、消耗品費として使用する予定である。
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