カリキュラム・マネジメントを掲げる現行学習指導要領の下では、PDCAサイクルを確立し、カリキュラム改善を行うことが求められている。しかしながら、カリキュラム評価の理論に多様なとらえ方があるように、その実践もまた一様ではないと考えられる。本研究は、これからのカリキュラム評価の在り方に対して、歴史的な視点から示唆を提示するために、19世紀から20世紀にかけて生起した国際的な教育改革運動である新教育運動に着目し、その中で取り組まれたカリキュラム評価の実態と特質を明らかにすることを課題とした。 上記の課題を遂行するため、令和5年度は考査研究に国内で先駆的に着手した東京女子高等師範学校附属小学校における1910年代~1920年代初頭の研究の実態と特質に関する解明を進めた。前年度に取り組んでいた教育教授研究会における考査研究との連続性や、児童教育研究会の設立に伴う共同研究の態勢構築に関する新知見について、教育史学会で発表したほか、令和6年度刊行予定の著書(分担執筆)にまとめた。 研究期間全体を通して、1900年以降戦前を通じて国内の教育ジャーナリズムに発表された成績考査や知能検査、教育測定などに関する膨大な記事を収集して分析を行った。また、評価研究に関心を寄せていた新教育の実践家や実践校に着目して、わが国の評価概念が1930年代の生活綴方の中で生まれたとする先行研究の指摘を再検討した。さらに、アメリカにおけるカリキュラム評価の成立と展開について、主要な人物や事例に着目して整理したほか、日本の実践校が新教育のモデルとした実践校との比較を行い、日本的な評価研究の特質について考察を進めた。
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