研究課題/領域番号 |
18K02279
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
石野 秀明 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (80346296)
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研究分担者 |
下里 里枝 関西国際大学, 教育学部, 准教授 (60782183)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認定こども園 / 私立保育所と私立幼稚園 / 移行過程における課題と対応 / 1号認定児と2号認定児 / 保護者 / 環境構成の工夫 / 保育の可視化 |
研究実績の概要 |
子ども・子育て新制度の実施を機に、私立保育所や私立幼稚園から移行するかたちで、認定こども園の数が急増している。本年度は、認定こども園への移行過程で、何が課題となり、どのように対応してきたのか実態調査を行った。兵庫県下の認定こども園のうち、私立保育所からの移行園を3園、私立幼稚園からの移行園を2園抽出し、各園で勤務する管理職5名と保育教諭6名に対して聞き取り調査を行った。質問内容は、認定こども園への移行の理由、移行過程での課題と対応であった。。聞き取り調査の記録は許可を得て、ボイスレコーダーで録音し文字起こしによりデータ化した。 移行過程での課題と改善策のうち、2018年度は、園舎の改築や改装、保育室や園庭など既成の設備の使い方の見直しなど園の環境に着目して分析を行った。認定こども園への移行において、①1号認定児と2号認定児の経験差や仲間関係、②多様な背景を持つ保護者の意識の相違や人間関係が課題として挙げられた。①の課題への対応として、(a)1号認定児と2号認定児が共に活動する場、(b)各々の生活が充実するための環境、(c)互いの生活の違いを可視化し認め合う場の設定等が明らかになった。②の課題への対応として、(d)保護者同士の交流の場、(e)ドキュメンテーションによる子どもの生活や学びの過程の可視化、(f)教育課程・保育計画の掲示等が示された。 2018年度の成果は、園の環境に限定してはいるが、認定こども園への移行過程における課題に即して、具体的な対応や解決策を明らかにした点にある。得られた知見は、2019年度の学会で発表予定である。今後、移行に伴う様々な課題と対応に視野を広げて、分析、検討を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
兵庫県下の認定こども園の中から、私立保育所からの移行園を3園、私立幼稚園からの移行園を2園抽出して、半構造化面接により聞き取り調査を行った。 調査の実施に当たって、先行研究を精査すると共に、現場の実態について意見交換を行い、移行過程での課題と改善策について、簡潔かつ全体的に把握するための質問項目を検討した。その結果、①園の環境、②全体的な計画、③保育内容(特に認定の違いによる課題、3歳未満児保育)、④保護者との連携や対応、子育て支援、⑤職員配置及び勤務体制(管理職)、職員間の情報共有及び連携(保育教諭)の5点に集約した。 聞き取り調査の記録は許可を得て、ボイスレコーダーで録音した。録音データを文字起こしし読み合わせを行った。上記の通り、2018年度は、園の環境に着目して詳細な分析を行った。同時に、移行に伴う課題と対応に関する他の項目についても、基礎的な分析に着手している。 2018年度の課題として、私立幼稚園からの移行園について、当初の予定よりも、十分なデータを得られなかったことが挙げられる。理由としては、(a)私立保育所に比べて、私立幼稚園からの移行園が少ないこと、(b)申請者が、私立幼稚園からの移行園をフィールドとして有していなかったこと等がある。これまで得られたデータの分析を進める中で、補完すべきデータを確認し、協力園の選定を行いたい。 以上を踏まえ、現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
聞き取り調査のデータを多角的に分析することで、認定こども園への移行に伴う課題と改善策について、仮説モデルの生成を試みる。さらに、生成されたモデルに基づき、3年目の量的研究に向けて調査項目の原案を作成する。仮説モデルと調査項目の原案については、認定こども園の管理職と保育教諭数名から意見を求め、修正を行う。 研究の過程で見いだされた知見については、学会発表や研究論文等の媒介を通じて、積極的に情報発信をしていく。まずは、園の環境に焦点を当て、移行過程における課題と対応について、2019年度の日本保育学会第72回大会で発表予定である。 研究を遂行していく上での課題としては、分析枠組の検討が挙げられる。これまで資料収集を進める中で、たとえば、認定区分毎の定員及び在籍園児数、全体的な計画の内容等、運営上の基盤においてさえも、認定こども園により多様になっていることが分かった。したがって、認定こども園を一括りにして調査を行っても、曖昧な知見しか得られない可能性がある。本研究では、移行前施設の違い(私立保育所と私立幼稚園)に着目しているが、これに加えて下位の分析カテゴリを検討し、必要に応じて導入していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に購入したモバイル型軽量ノートパソコンが、当初予定よりも低価格で納入できたため、次年度使用額が生じた。 2019年度は、2018年度に収集したデータを分析すると共に、成果発表を行う。そのため、①保育学関係資料の収集、②データ収集に係る旅費、③ータ分析謝金、④研究成果発表にかかる旅費、④研究論文の作成と公表に当たっての印刷費、翻訳費等を要する。
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