研究課題/領域番号 |
18K02279
|
研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
石野 秀明 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (80346296)
|
研究分担者 |
下里 里枝 関西国際大学, 教育学部, 准教授 (60782183)
川口 めぐみ 高松大学, 発達科学部, 講師 (50815785)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 新型コロナウイルス感染症 / 行事の意味 / 子どもの主体的な育ち / 保護者と地域の理解 / 公立と私立 / 認定こども園、保育所、幼稚園 |
研究実績の概要 |
子ども・子育て新制度の実施を機に、認定こども園の数が急増している。保育所や幼稚園からの移行過程における、課題と対応策について検討を行ってきた。申請後、新型コロナウィルス感染症により、認定こども園の保育・教育における課題は大きく変化した。移行前施設により、重く受け止められている課題、利点を活かした対応は異なると思われる。 そこで、2021年度は、コロナ禍における行事の在り方に着目した。幼保連携型認定こども園教育・保育要領の中で「行事の指導に当たっては、(中略)生活の自然な流れの中で(中略)園児が主体的に楽しく活動できるようにすること。なお、(中略)教育及び保育における価値を十分検討し、適切なものを精選し、園児の負担にならないようにすること」とされている。コロナ禍においては、自然な生活が崩れ、感染症対策のため活動は制限されることになる。先行研究においては、子どもの育ちや学びを実現するため行事の価値を精査し、保護者や地域の理解を得た過程については検討されていない。そこで4つの協力園を対象にインタビュー調査を行った。 分析の結果、共通して見出されたのは、先行研究で指摘されてきた感染予防を行いつつ、運動会の実施方法や内容を検討し工夫したことである。具体的には①子どもが自ら動く、考える、運営するなど主体的な育ちに繋がった。②その前提として保護者や地域の理解を得るために、行事のねらいをこれまで以上に丁寧に説明していた。③公立園では地域との繋がりから従来の演目を意識した対応が取られているのに対して、私立園では保護者との連携により、演目を刷新して実施していることが窺えた。 得られた知見は、2022年度の学会で発表予定である。新型コロナウイルス感染症の拡大とその対策も踏まえて、今後も移行前施設の違いによる保育内容について、分析、検討を進めていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は、2020年度の反省から、新型コロナウイルス感染症の拡大による保育・教育の課題に着目し、新たにインタビュー調査とデータの分析を行った。その過程で、移行前施設だけではなく、公立と私立という設置主体の違いにより、コロナ禍における行事の在り方に違いがあるのではないかと仮説を立てて、課題と対応策の現状を明らかにした。 申請時は、データ分析の結果に基づき、認定こども園への移行に伴う課題と改善策について、調査項目を作成することを予定していた。2021年度もそこまでには至らなかった。新型コロナウイルス感染症の拡大により調査が実施できなかったこと、さらに、保育の課題の変化を申請者自身が十分に把握できていなかったことが挙げられる。 これまでの研究の成果を踏まえて、コロナ禍による認定こども園をめぐる大きな状況変化を踏まえながら、移行前施設の違いによるの課題と対応策について、学術的・社会的意義のある研究に向けて、より具体的に解明することを目指したい。以上を踏まえ、現在までの進捗状況を「(4) 遅れている」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究から、移行前の施設により保育・教育の課題が異なることが分かった。具体的には、移行前の施設が私立保育所の場合は3歳以上児、私立幼稚園の場合は3歳未満児の保育・教育に関わる課題が多いことが推察された。これに加えて、2021年度の研究では、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、公立と私立という設置主体により保育・教育における重点的な課題と利点を生かした対応策に違いがあることが示唆された。 そこで、今年度は、今般の教育政策の動向も踏まえ、ICT化と特別支援保育に焦点を絞り、課題と対応を整理した上で、量的研究の調査項目を作成する。さらに、設置主体と移行前施設の違いによる比較を行う。 研究の過程で見いだされた知見については、学会発表や研究論文等の媒介を通じて、積極的に情報発信をしていく。まずは、行事の在り方について、2022年度の日本保育学会第75回大会で発表予定である。さらにこれまでの学会発表も含めて、学術誌や紀要論文への投稿を目指していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、研究活動が停滞したため、次年度使用額が生じた。 2022年度は、①保育学関係資料の収集、②アンケート郵送・回収費、③データ入力謝金、④研究論文の作成と公表に当たっての印刷費、翻訳費等を要する。
|