研究課題/領域番号 |
18K02281
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
林 孝 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 名誉教授 (30144786)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 職員室文化 / 地域とともにある学校 / 特色ある学校づくり |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,①地域に根ざす特色ある教育活動を展開する複数・多校種の事例校における現状と各事例校における職員室文化形成のメカニズムを検討すること,②それら事例校のもつ条件性に根ざす「特色ある開かれた学校づくり」の実態から「職員室文化」の継承による学校づくりの様相を解明すること,③学校内外において連携・協働する「職員室文化」開発のための学校経営方策を提案することである。 令和2年度においては,前年度に引き続き,学校のもつ条件性に根ざす「職員室文化」であることを念頭に,学校内外において連携・協働し,地域に根ざす特色ある教育活動を展開するモデル事例校の3校目を対象として,「職員室文化」の現状と職員室文化形成のメカニズムの検討をめざした。この3校目のモデル事例校も小規模校で,しかも小中一貫教育校である。学校運営協議会のメンバーとして会議における様子の参与観察,校長・教頭等からの聞き取り調査,同校でスクールカウンセラーを務める研究員との対話を通じて,地域住民や子どもも含め「ともに」教育活動を推進する存在を含めて,学校づくりについての思いを共有することの可能性を「職員室文化」の形成に寄与するものと捉えることができることを指摘した。 なお,昨年度末からの新型コロナウイルス感染防止の影響のもと,予定した「聞き取り調査」等はできなかった。その間においてはこれまでの2つの先行研究課題の成果と本研究課題のこれまでの成果を再整理した。その結果,研究の方向性を再検討することができた。その成果を,『「職員室文化」研究序説-特色ある開かれた学校づくりと教職員の力量形成を考える-』(林孝編著,多賀出版)のタイトルの書籍として刊行することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度では,地域に根ざす特色ある教育活動を展開するモデル事例校3校目の「職員室文化」の現状と「職員室文化」形成のメカニズムの検討を目指したが,新型コロナウイルス感染防止に係る措置のもとで十分な資料の蓄積とならなかった。さらに,予定していた同時代を同じ学校で過ごした教諭4名によるグループインタビューの企画も,同様の状況で実施に至らなかった。 なお,これまでの成果を再整理して刊行した『「職員室文化」研究序説-特色ある開かれた学校づくりと教職員の力量形成を考える-』においては,「職員室文化」研究のこれからを展望して,次のような諸点をも射程に入れて研究を発展させていくことが必要とされることを明らかにできた。それらは,①「地域づくりの核」としての学校における「職員室文化」の検討,②「チーム学校」としての「職員室文化」の生成の可能性の検討,③「働き方改革」を可能とする「職員室文化」の創造,④学校教育の危機事態(新型コロナウィルス感染防止の取組)への対応における「職員室文化」の継承と創生である。 以上に鑑み,当初計画の見直しができるとともに今後の方向性を特定することができたため,研究全般の進捗状況としては「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.地域に根ざす特色ある教育活動を展開するモデル事例校から,それら学校のもつ条件性に根ざす「特色ある開かれた学校づくり」の実態を踏まえ,学校教育の危機事態(新型コロナウィルス感染防止の取組)への対応を検討して,「職員室文化」の継承と創生という観点から,「職員室文化」の継承による学校づくりの様相を解明すること。 2.事例校で同時代をともに過ごした教員集団の「職員室文化」についての受け止めをめぐって共通性と相違性を確認し,「働き方改革」を可能とする「職員室文化」の創造を検討して,学校づくりと教員個人の力量形成への影響について検討すること。 3.事例校への異動前の勤務校からの継承や異動後の勤務校への継承の有無を検討すること。 以上を踏まえて,学校内外において連携・協働する「職員室文化」開発のための学校経営方策を提案することを目指し、研究のまとめをする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度計画していた調査研究において,新型コロナウィルス感染対策の影響で実施できなかったため使用できなかったことが,次年度に使用額を生じることとなった主な理由である。その使用額については,翌年度分として請求した助成金にあわせ,調査研究に係る旅費及び調査結果の分析整理の経費として使用する予定である。
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