本年度も県外への移動、図書館、文書館等の利用に制限があり史料の調査・収集に直接赴くことができなかったが、第一に、各文書館のご協力により、高等試験令第七条試験(以下、高資)に関係する一次史料を6館から収集することができた。特に2県の文書館から受験者名簿等を収集できたことで、当該県における試験の実施状況、受験者の実態の一端を明らかにできた点は大きな成果である。受験者名簿に関しては郵送等での入手は叶わなかったが、他に2県の文書館より個人情報等の審査を経て閲覧の許可を得ている。状況が整い次第史料調査を実施したい。 第二に、二次史料である高資受験者の合格体験記が掲載されている雑誌記事の収集、分析を進めた。本年度までに入手できた記事について受験動機の分析を行った。将来の高等試験本試験の受験を目指しての受験という動機が主として抽出されたことは、高資が高等試験予備試験を受験するための資格を認定する試験であるため必然である。そのうえで、専門学校入学者検定試験(以下、専検)に合格できないから、英語など専検には課されているが高資にはない特定の科目に自信がないから、専検より科目数が少ないから、専検に合格しても経済的に上級学校への進学は叶わないからなど、高資受験の動機として専検を意識した記述が散見された。この点については、「中学校卒業者と同等以上の学力を有するもの」の指定に関連して、引き続き検討を深めたい。 新型コロナウイルスの影響により、本研究を当初の計画通りに進めることはできなかったが、史料の収集には進展があり、年度内に複写を依頼した史料が随時到着している。事業は本年度で終了となるが、研究成果を論文としてまとめ公表する予定である。
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