研究課題/領域番号 |
18K02285
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
森岡 次郎 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (10452385)
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研究分担者 |
福若 眞人 四天王寺大学, 教育学部, 講師 (50844445)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 教育関係 / 他者 / 能力観 / 特別支援教育 / 死生観 |
研究実績の概要 |
2020年度は、前年度に引き続き、本研究における「理論」的研究を行った。研究分担者の四天王寺大学の福若眞人氏とともに、日本教育学会第79回大会(2020年8月24日~28日、オンライン開催)のラウンドテーブルを主催し、本研究の理論的モチーフについて共同発表を行った。 「他者」概念を教育哲学的に位置づける試みとして、『歓待と戦争の教育学―国民教育と世界市民の形成』という研究書についての書評を執筆し、『関西教育学会紀要』(第20号)誌に発表した。本書の議論は、不在の(すでにいない、未だいない)「他者」との関係を主題化したものであり、教育を駆動するメカニズムについて原理的に考究している。 また、具体的な教育実践との接点として、教育科学研究会編の雑誌『教育』(2020年7月号、旬報社)において「『多様な学び』の『多様性』をめぐって」という論攷を寄稿した。本研究における主要課題の一つには、能力主義的人間観の克服が挙げられる。本稿では、そのためのアイデアとしてのオルタナティブ教育運動と、そうした運動における理論的課題を明らかにした。 昨年度に執筆した遠山啓に関する論攷を元に、主として現職の学校教員が読者である『教職研修』(2020年11月号、教育開発研究所)において、「教育の先人に学ぶ 『たのしい授業』を求めて」を執筆した。 研究分担者の福若氏は、教育哲学会(2020年10月)のラウンドテーブルにおいて、レヴィナスの理論を用いた「出生」という出来事に関する考察を行い、また、『関西教育学会年報』において京都学派の西谷啓治についての論攷を発表した。いずれの研究も、「生死」をめぐる諸問題、存在論的位相に関わる原理的考察として、本研究に位置づけることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の本研究は、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初に予定していたフィールド調査、および対面での開催を予定していた研究会などが実現できず、とりわけ教育現場(実践)とのかかわりを深める、という観点からは、やや遅れている。そのため、当初の3年計画を1年間延長することとなった。 「理論」と「実践」の架橋を目指す本研究であるが、「実践」とのかかわりが難しい中でも、研究代表者(森岡)が研究分担者(福若)と共に共同で学会発表を行ったこと、また、各自が「他者への欲望」に関する教育哲学研究の理論的深化を進めたことについては、十分な研究成果であるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度までの研究成果に基づき、引き続き理論研究を行うとともに、オンラインを活用しつつ、教育実践とのかかわり、教育実践の分析を行っていく。研究分担者との役割分担を明確にしつつ、教育哲学の基礎理論研究、および、特別支援教育における「他者への欲望」の具体的な検討を進めていく予定である。 教育実践者、研究者との協力体制を構築するために、2020年度に引き続き、人件費の中から事務補助員を雇用し、本研究をより推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、学会・研究会等がすべてオンライン開催となったため、旅費、および研究会ゲスト謝金等が支出できなかった。研究期間を延長し、2021年度には必要な物品(書籍、PC関連)などを購入し、また、事務補助員の人件費などを支出し、最終年度の研究を遂行する予定である。
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