研究実績の概要 |
最終年度に実施した研究の成果としては、アイルランド教育史論集への寄稿が挙げられる(Iwashita, Akira. 2022. ‘Denominationalism, Secularism, and Multiculturalism in Irish Policy and Media Discourse on Public School Education.’ In Education Policy in Ireland Since 1922, edited by Brendan Walsh. Cham: Palgrave Macmillan(執筆担当個所は87-116頁))。19世紀における国民学校制度の歴史を踏まえつつ、公教育の再宗派化が現代のアイルランド教育制度にもどのような影響を遺したかに関するオーバービューにもなっている論考である。また、コロナ禍で中断していた史料調査を、年度の最終段階で実施することができた。最終年度内に成果として発表するには至らなかったが、今後論文化して公刊を目指していく。 研究期間全体としては、査読付きの単著論文や共著書籍その他を含め七点の刊行物と三つの学会発表を行った。とりわけ、教育史学会誌に掲載された「私設公営学校」を通じて国民学校の宗派化の過程を明らかにした論考は、アイルランド公教育制度の宗派化という研究目的に合致したオリジナルな成果を挙げることができたと考える。また、上記の研究成果をより一般的・比較史的な視点から論じた日本教育学会誌掲載の論考は、公教育と市民社会・民主主義のあいだの逆説的かつ権力的な関係を指摘することで、歴史研究としてだけでなく、教育学の理論研究に対しても一定程度貢献するものであると考える。
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