本研究は、ひとたび成立した近代的かつ世俗的な公教育制度が、その後の歴史において(再)宗派化した事例を取り上げ、そうした「特異」な事例がなぜ、どのようにして生じたのかを実証的に明らかにした。これは、近代における公教育制度の展開という通説への反証であると同時にその展開の異なるヴァリエーションを提示したという意義がある。また、本研究の事例から得られた知見は、地域の人的結合や市民社会、「われわれの学校」という意識が、むしろ学校を宗派化し公共性を限定するという側面を明らかにすることで、公教育とは何かを探求する原理的研究にも寄与するものである。
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