本研究は、イギリス(スコットランド)とオーストラリア(ビクトリア州)の教員養成機関(本研究では大学を対象とする)に対するアクレディテーションの実施過程に着目し、アクレディテーションにおける外部評価と内部質保証の連動メカニズム、およびそれを成立・機能させる要件の解明を目的としている。そのうえで、これら二つの地域の質保証モデルを比較の枠組みとしながら、日本の教員養成の質保証システムに固有の特質と構造的課題を明らかにすることを目指している。 2023年度前半は、オーストラリアに関する最終調査を実施した。まず本研究が主な対象としてきたビクトリア州の教員養成との比較対照事例として、多様性の点で先進的な教育実践を有するクイーンズランド州のグリフィス大学を訪問し、グリフィス大学における教師教育の実態について、コロナ禍での取組状況を含めて調査を行った。また、オーストラリアの先住民族に関する新たな全州的動向が今後の先住民族政策や教師教育政策に与える影響等について研究協力者らと意見交換を行った。さらに、現地の公立校を訪問し、教師の養成・研修、職務内容(Teacher Aideとの役割分担など)、教育活動の実態などについて調査した。2023年度後半は、これらの調査結果を踏まえ、オーストラリアの研究協力者らとのオンラインミーティングを続け、オーストラリア調査の結果をまとめ、分析を進めた。 また、研究全体のまとめとして、これまでに行ったイギリスの教師教育に関する調査とその分析を継続するとともに、日本の教員養成の質保証システムに固有の特質と構造的課題をエコロジカル・アプローチによる教師エージェンシー(teacher agency)の観点から分析し、調査結果をまとめた。
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