研究課題/領域番号 |
18K02293
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
高橋 亜希子 南山大学, 人文学部, 教授 (90431387)
|
研究分担者 |
和井田 清司 武蔵大学, 人文学部, 教授 (50345542)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 高校 / 探究 / 総合的な探究の時間 / 高大接続改革 / 大学入学共通テスト / 新高校学習指導要領 / 探究学習 / 内発的 |
研究実績の概要 |
今年度は、(1)高校学習指導要領と探究学習に関する学会発表、論文の作成、(2) 探究学習を実施している高校の授業観察、研究担当の教諭に対するインタビュー、の2点を行った。 (1)に関しては、①新指導要領における各教科の探究の内容は仮説検証、テーマ学習など様々であり、「探究」の明確な定義はなかった。②高大接続と探究学習の関係については、大学入学共通テストの記述式問題と探究学習の関連は弱い一方で、国立難関大学の推薦入試要件に高校での探究学習の成果が求められることから、探究学習が難関大学入学への別ルートになりつつあることが示唆された。③大学生に対する高校の学習に関する回顧調査の分析(計373名:2016年実施)から、a高校の「総合的な学習の時間の実施・内容は低調である、b教科学習は一斉授業が中心である一方で生徒は生徒主体・参加型の授業を望んでいることが明らかになった。以上の結果から、高校において探究科目が多く導入された一方で、高校における実施面の基盤もまだ弱く、難関大学を目指す高校以外では大学進学という動機づけも持ちづらいこと、一方で受動的な教科学習を生徒主体、参加型に変える必要があり、探究学習がその契機となりうることが示唆された。 (2)に関しては、① 探究学習(個別探究学習、卒業研究)の指導場面の観察:国立A高校の3年生の探究学習(卒業研究)指導場面の継続観察、私立B高校の2年生に対する個別課題研究の資料収集場面の観察。②新指導要領開始に向けたカリキュラムに関するインタビュー:国立C高校(2019年6月)、私立のD高校(2020年3月:2回目)。③大阪の高校訪問(2020年1月):探究学習を中心に置いた中高一貫校に転換した公立E高校、「教育探究科」において卒業作品発表会を行う私立F高校、国際バカロレア課程を持つ私立G高校を訪問し各学校の教育実践に対する聴き取りを行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は高校の探究学習に関する3本の論文を執筆し、学会・研究会での発表2件が行えたことから、研究に関しては順調に進んでいる。 高校の総合学習や探究学習は2010年代に入っても、不十分にしか実施されていずそれにも関わらず探究科目が多く導入されたこと、難関大学を目指す層以外は探究学習と高大接続との関連も強くないことから、現状との不整合が生じ探究学習が形式的な実施となる可能性が高いことが見えてきている。しかし、探究学習を実施している高校への聴き取り調査からは、「生徒が受動的になってきていて、探究学習の導入を通して生徒の主体的な活動を活発にしたい」「知識注入の受験勉強ではこれからの時代に太刀打ちできない。探究学習を通して地域を支える生徒を育てたい」など、学校文脈や生徒の状況を変える契機としたいという学校の内発的なニーズから探究学習を導入する学校も存在していることがわかった。 現在までは高校の学習指導要領と探究学習に関する全体的な文脈や状況を整理した。今後は、インタビュー調査や訪問調査を通して得られた、カリキュラムの再編成や高校の実際の探究学習の指導・内容に関して、「内発的発展」との関係から分析、考察を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、(1)高校の研究主任に対する新指導要領に向けたカリキュラム改訂とその内容、過程に対するインタビューの継続、(2)探究学習を導入している高校への訪問、聴き取り調査 (3)「内発的発展」に関する理論の学習と事例分析 C高校を中心に、(4)学会発表、論文執筆、を行う。 (1)に関しては、私立B高校の教員研修とカリキュラムの改訂との関係が興味深く、また2020年度は実際の教育課程の計画・設定に入っていくため、継続してインタビューを行いたい。(2)に関しては、大阪のE高校、F高校の再訪問を予定している。(3)「内発的発展」については、探究学習を有機的に位置付けている高校を分析する上で必要な概念であり、その定義、分析概念の確定については共同研究者の和井田氏と共に取り組む予定である。 (4)の学会発表については、2020年8月開催の日本教育学会、2020年9月開催の日本教育方法学会での発表を予定している。しかし、コロナ対応により学会の開催が危ぶまれるため可能であれば論文執筆のほうにシフトすることを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月末に行ったインタビュー調査の謝金を執行したため。
|