2023年度は、① 2023年3月にB高校において実施したインタビューを基に、E校長の内発的学校改革のキーパースンとしての資質を考察する学会発表を行った。② 研究の総括としてA高校、B高校二つの事例の比較考察の学会発表を行った。①に関しては「内発的学校改革と教師の役割―高校改革のキーパースンとしてのE氏―」というタイトルで日本教育学会第82回大会で自由研究学会発表を行った。E氏の学校改革の中核にあるのは状況の把握と的確な分析、分析に基づく立案と関係者との対話を通したコーディネーションであり、それに基づく提案(ビジョン)の妥当性の高さが実現に繋がっている。E氏の学校改革は、常に目の前の子どもの成長を支える場としたいという信念が基盤にある。教育委員会とのねばり強い交渉や、自ら足を運び関係者と直接話す習慣にも、一教諭時代の経験が反映されており、学校改革の試行錯誤を通してE氏の資質が形成されたと考えられる。内発的学校改革は、官僚的な教育システムを突き崩して新たな実践を創造する試みであるが、そのキーパースンは子どもの成長への願いと共に、自身が内発的な学校改革を経験することにより形成されることが推察された。②に関しては“Endogenous School Reform: The Development and Implementation of Inquiry-Based Learning in High School Curriculum”のタイトルで2023年11月にシンガポールで開催された世界教育学会で発表を行った。各国の方からの質問があり、各国でも高校では各教科教員の独立性が高く探究学習を基にしたカリキュラム開発は容易ではないこと、とりわけ文系の研究を行うことの難しさがを知ることができた。
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