研究課題/領域番号 |
18K02297
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研究機関 | 女子美術大学短期大学部 |
研究代表者 |
山田 朋子 女子美術大学短期大学部, その他部局等, 教授(移行) (50331418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 教育制度学 / 教育困難高校 / 高校政策 / 教育課程 |
研究実績の概要 |
まず、「教育困難高校」における「社会的自立力」の育成に重要な基礎学力の育成のための取組状況を検討し、その課題(特に、生徒の状況から学力保障の取組が求められている学校であっても、その対策がなされていない実態、教育課程の編成における教科科目での人的資源の不足、高校生に適した学習支援の方法の開発の必要性)を明らかにしたことで、教育課程の中での課題の焦点化ができた。 総合学科は、求められる専門分野の広さやそれに伴う施設設備と幅の広い教員の専門性、人員の配置など、普通科や専門学科に比べ、多くの人的物的財的な条件整備が必要とされている。そのため、小規模高校ではその特色を活かした教育課程での科目の設置が困難となることが想定される。そこで、1年2学級(80名定員)の事例に着目し現地調査を行った。そこでの調査結果から、限られた科目や限られた専門分野の範囲の中で教員を配置し、教育課程の編成をしなければならない普通科での取組に関して、工夫できる可能性への知見を得ることができた。 加えて、次年度以降の調査対象を抽出するため、公立高校を設置する全ての都道府県及び政令指定都市教育委員会で行われている高校教育の展開、なかでも学力が下位にある「教育困難高校」に関する施策と、その中で「社会的自立力」の育成に関連するの取組の現状を確認した。そのことで、全国的にみた「教育困難高校」に関する問題意識の温度差、そして自治体毎の進捗状況の違いに大きな差が生じていることを把握できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、まず高校改革及び「教育困難高校」に関連する新たな先行研究の確認を行った。次に、過去の研究成果から得たアンケート調査結果を踏まえ、「教育困難高校」での「社会的自立力」の土台となる基礎学力育成の現状と課題について分析し、学校での取組の課題を示した。一方、小規模の総合学科高校を対象に、学校規模による人的物的財的条件整備の限界の中で、社会で自立するための職業に連動する教育課程の設置と運営状況を調査することで、普通科を対象とした調査の実施への示唆を得ることができた。さらには、次年度の計画としている各教育委員会の高校政策と学校への支援策について、調査対象の自治体の抽出ができた。 ただし、当初の計画であったアンケート調査については、新学習指導要領の移行期間を考慮し、次年度以降での実施が適当であると判断されたため、本年度は実施しなかった。また、米国については調査対象校の地域で発生した自然災害のため、本年度は現地調査の実施を見合わせた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、2018年度に取組を確認した都道府県及び政令指定都市の教育委員会のなかで、「教育困難高校」に関して積極的に施策を持つ自治体、あるいは持たない自治体を抽出し、学校での「社会的自立力」に関する教育課程にどの程度の支援がなされているか、否かを明らかにするため、事例校調査を実施する予定である。その結果から、学校現場での教育課程が持つ特質と課題を明らかにしたい。 また、米国については、特に貧困層の地域に設置されている高校において、地域社会の人材を活用し連携しながら、実践的な取組の中で「社会的自立力」育成を目指す学校の事例調査を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究テーマである「『教育困難高校』における『社会的自立力』育成の教育課程モデルの構築に関する研究」においては、学習指導要領改訂の柱である「社会に開かれた教育課程」との関連性が重要な観点であるため、それを踏まえた上で、学校現場の取組を調査することが不可欠である。 平成30年度、ある事例校での調査を行った結果、高校学習指導要領改訂のスケジュールである平成30年度「周知・徹底」期間ではなく、平成31年度よりの移行期間がスタートした後に、学校現場での聞き取り及び資料収集の計画を実行することが適切と判断された。よって、平成30年度予定の調査のための予算を平成31年度に変更することとした。 また、今年度予定の米国調査に関しては、自然災害の沈静化と安全性の確保が明確となった時点(次年度の見込み)で実施することとしたため、その調査予算を次年度に変更し使用することとした。
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