宮城県教育庁等と協働しての社会教育職員研修づくりの経験、とりわけ近年のコロナ禍におけるオンライン研修づくりの経験を基盤に、2020年度は、文部科学省事業「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」事業を受け、障碍当事者の生涯学習の条件づくりをテーマにした研修事業づくりに着手。ここでは、若年性認知症などを事例に、「あらゆる人がいずれは障碍者として生きる」という、自明でありながらも多くの人々の認識の弱いところへの気づきを促す学習プログラムや、地域の人々と障碍当事者とが混ざり合い、知り合い、共に学びあう関係構築など、従来の生涯学習計画において位置づけの弱かった内容を学ぶ研修プログラムを、一定の水準で達成することができた。その後、本研修を経験した方々が新たな担い手となり、後継の文科省事業(学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究)が仙台市との協働で取り組まれ始めるなど、この取り組みの継承と発展が現れている。 研究の主題である、自治体における社会教育・生涯学習計画の検証にむけては、最終年度は、宮城県白石市、千葉県君津市、福島県飯館村の社会教育関係職員との研究協議を重ねた。社会教育施設の地域委託や、教育行政から一般行政部局への組み換え等が進む状況下において、公民館等の現場で展開される学習の質を担保するために、行政本体に在職する立場で取り組まれていることの内実を明らかにすることができた(社会教育・生涯学習研究所年報第17号 第一部 自治体「正規」職員はいま)。 加えて、この研究延長期間には、東日本大震災後に被災地域に現れた防潮堤計画や、近年の公共施設再編計画に対し、民的な立場から修正を促してきた学習や運動に着目し、いかなる学習や運動がそうした行政計画の修正を可能としたのかの検証に取り組めた(旬報社『月刊社会教育』2022年7月、8月、9月号)。
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