研究課題/領域番号 |
18K02305
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
朴木 佳緒留 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (60106010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 女性被災者支援 / インタビュー調査 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は東日本大震災の被災女性の経験を生かした支援策を探ることにある。2019年度の研究実績は以下である。本年度は研究の2年目にあたり、現地調査によるデータ収集に注力した。まず、5月に大船渡市赤崎地区にて「ミシンの会」に参加し、高齢被災女性の生活復興について参与観察を行った。また大槌町の「おばちゃんくらぶ」を訪問し、インタビューの事前調査を行った。6月には大船渡市の漁協女性部を対象としたグループインタビューを実施した。「おばちゃんくらぶ」代表にインタビュー調査を行い、さらに、大船渡市赤崎地区の復興市に参加し、参与観察を行った。11月の大船渡市訪問では、「ミシンの会」への参与観察と現地ボランティアへのインタビューを行った。以上の調査を踏まえて、2020年2月に「復興を目指す手作りグループ」の意義を考えるシンポジウムを、また同年3月には今年度3回目となる現地調査を実施する予定であったが、それらはいずれも新型コロナウィルス感染拡大防止のためキャンセルとせざるを得なかった。その結果、いくつかのデータ収集はできたものの、「小括」の場となるはずであったシンポジウム及び現地調査と交流は未実施となり、データをまとめるまでには至らなかった。特に、前年度より調査の先送りをせざるを得なかった外国人女性被災者へのインタビュー調査が未実施となった。 しかしながら、いくつかの現地調査により、高齢の被災女性たちが「手作り作業」を媒介として「相互の支えあい」を図っていること、その活動には異なるパターンがありそうなこと、女性たちは震災前に存在したヒューマンネットワークを被災後にも活かす努力をしていること等が明らかになった。また、避難所支援については、現地の支援者の経験をさらに掘り起こす必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたように新型コロナウィルス感染防止のため、2020年2月と3月に実施予定していたシンポジウムと調査活動をキャンセルせざるを得なかった。調査対象地である岩手県は現在(2020年4月25日)のところ感染者ゼロであり、また本研究の調査者(研究代表、協力研究者)は緊急事態宣言の当初からの対象地域(兵庫県)の居住者である。感染防止が国家的な課題となっている状況下では、調査等の実施をあきらめざるを得ない状況下におかれた。したがって、小括を行うはずであった機会を失った。さらに言えば、2月のシンポジウムおよび3月の現地調査と交流は実施直前まで中止の決定を行うことができず、代替えとなる研究活動を検討することもできなかった。そのため、当然に研究経費も次年度送りとせざるを得ない状況である。予期せぬ事態となったため、研究3年目となる2020年度の研究計画についても組み換えが必要になる。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目となる2020年度には、2019年度に実施できなかった研究活動を含めて、見直しを行う必要が生じた。第1点目として、被災女性の相互支援が「手作り活動」を媒介として行われている女性の相互支えあい活動をさらに錬磨するための調査を行う。具体的には大船渡市の「ミシンの会」(参与観察)と大槌町の「おばちゃんくらぶ」の二つの活動について比較検討したい。第二に、避難所運営の方法について、女性被災者の声を生かす方策をさらに探りたい。過去2年間の調査により、地域の古い人間関係(家父長制)を検討視点に加える必要性が見えてきた。したがって、先行研究の再検討と「古い人間関係」を具体的に捉えるための現地調査をさらに進める必要がある。 以上は、当事者インタビューだけでなく、「目に見えないもの」をとらえるための参与観察及び現地ボランティアとの対話を必要とするため、3回の現地訪問が必要と考えている。第三に、先送り状態になっている外国人女性被災者へのインタビュー調査を改めて設定する。 以上については新型コロナウィルスの感染が収束する時期等が不明のため、現地訪問の時期や調査方法等を具体化することが難しい事情にある。そのため、2020年度には「走りながら考える」研究とせざるを得ない覚悟でいる。データ収集が上記の予定通りにできた暁には、まとめの論考を整理して本研究の仕上げとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染防止のため、2020年2月および3月に予定していたシンポジウムと現地調査をキャンセルせざるを得なかったため。
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