2022年度は女性被災者へのインタビュー調査の補充とコロナ禍以後の状況について聞き取りを行い、本研究で得た成果と資料について研究協力者と共同して報告書を作成した。 本研究の目的は東日本大震災の女性被災者の実感に寄り添い、当事者をエンパワメントする支援方策を明らかにすることであり、①女性被災者の実感を明らかにする。②被災地在住の支援者を交えたワークショップにより、当事者ニーズを振り返る。③女性被災者のエンパワメントを促す支援策を明らかにする、とした。現地でのインタビュー調査を中心とする研究計画を立てたが、コロナ禍により被災地に出向くことが出来ず、研究期間の延長と研究方法の変更を迫られ、修正した。すなわち、コロナ禍以前に行ったインタビュー調査より得た女性被災者の実感を基に支援策を構想し、阪神・淡路大震災の被災地で「支援方策を考えるワークショップ」を行い、支援策の妥当性を検証した。その結果、以下の3点が析出された。a)避難所運営等に女性リーダーを置くことが推奨されたが、インタビュー調査では、女性自身がリーダーとなることに納得していないことが分かった。古くから続く地域独特の意思決定の慣行とジェンダー差別が交差しているためと分析した。したがって、「女性リーダーの配置」を「かたち」として実現することよりも、地区ごとの事情を踏まえた「最適解」を考えるプロセスこそが重要であると考えた。b)女性のエンパワメント策として、小人数グループでの手作り作業等の協働の場の存在は有効であり、場の提供と少額資金提供を息長く続ける必要がある。c)被災外国人支援、漁業等の家族事業者支援など、被災者の属性に対応した個別支援が必要であり、それらが地域全体の安全・安心を生む基盤になると思われる。総じて、女性被災者の実感を活かした支援策の探求は、インターセクショナリティと正面から向き合うことこそが必要と思われる。
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