研究課題/領域番号 |
18K02307
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
曽余田 浩史 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60253043)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学校経営組織論 / 教師の仕事の仕方 / 動的相対主義 / 「ずれ」による創造 / 組織学習 |
研究実績の概要 |
(1) 学校組織の一員としての教師の仕事の仕方をデザイン行為として捉えて、「学校経営の近代化」から「学習する組織」へと至る我が国の教育経営学(学校経営組織論)の展開の中で、その仕事の仕方の特徴と変遷を明らかにした。「学校経営の近代化」は、与えられた役割(タスク)を目標達成の責任をもって確実かつ効率的に果たすべきことを教師の仕事の仕方として求めた。その後の「学校経営の現代化」は「問題解決」という仕事の仕方を教員に求めた。これらは主客二元論と還元主義を特徴とし、教師を「技術的熟達者」として捉える。「学習する組織」は、相互影響・相互形成の中の行為主体/実験者/探究者というスタンス、相互影響・相互形成の拡大・深化・再創造を特徴として、教師に「状況との省察的な対話」という仕事の仕方を求める。 (2) デザイン論の視点から上田薫の教育論の哲学的基盤である「動的相対主義」に注目し、組織学習としての学校づくりの意義を見出そうとした。動的相対主義は「生きた現実をそのまま徹底させたところ」として発見される「ずれ」による創造を重視する。それを踏まえると、組織学習を興していく指針として次の3つが考えられる。(指針1)組織学習におけるねらい:実践のなかで「ずれ」の“生きたさま”が、まざまざと見え、意味づけ価値づけることができるような自己更新がなされること。そうした組織学習の主体として教員を捉え、学校の諸活動のなかで位置づける。(指針2)学校の目標概念群や経営計画で検討されること:目標概念群や計画は、実践のなかで生み出される「ずれ」が生かせるよう、どのように複線的重層的に展開可能性が担保されるかが検討される。(指針3)評価の中心に据えられること:日常の教育活動のなかで生じ追究される「ずれ」がどのように学校経営計画を破っていくかという考察が、新たな創造の可能性の価値づけとして評価の中心に据えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)組織デザイン論の展開や学校づくり論に関する理論的考察は、その研究成果を学会発表や紀要にまとめることができ、順調に進んでいる。 (2)学校(管理職や教職員)の事例調査と分析は、新型コロナウイルス感染症の影響のため、県外の学校への訪問が困難であった。また、本研究におけるデザイン論(開発的なデザインアプローチ)の立場にたつと、単なる聞き取り調査では実態把握ができず、学校現場での実践を通した管理職や教職員との相互交流が不可欠である。ゆえに、研究計画の変更が必要である。 (3)スクールリーダー教育を行っている教職大学院の訪問調査について、新型コロナウイルス感染症の影響のため、当初予定していた教職大学院への訪問ができなかった。また、本研究におけるデザイン論の立場にたつと、単なる聞き取り調査では実態把握ができない。ゆえに、本研究に近い問題関心をもつ近隣の教職大学院の教員3名程度を本研究の研究協力者として加え、デザイン論の視点から自身のスクールリーダー教育(プログラムや指導の仕方など)の分析と考察を行うという方向で研究計画を変更し、基本的な視点の共通理解と分析を進めつつある。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 現在の新型コロナ感染症の影響を踏まえると、事例調査を行うことは困難なため、全体計画として、理論的考察に重点を置いたものに変更する。 (2)デザイン論の視点から学校づくり論の特徴と意義を捉え直す。その際、その学校づくり論の実践事例や実践記録の収集と分析に力を入れる。 (3)教職大学院の教員3名程度を本研究の研究協力者とし、デザイン論の視点から自身のスクールリーダー教育(プログラムや指導の仕方など)の特徴、課題、今後の改善の方向性の分析と考察を行う。その研究成果を学会発表および紀要にまとめる。 (4) 研究のまとめとして最終報告書を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響により、研究成果発表や事例調査の出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。 今年度は、研究計画を変更して、理論的考察に重点を置き、そのための文献や実績記録等の資料を購入する。
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