(1)生活綴り方教育を基盤とする東井義雄の学校づくりを考察し、1)「目」をはたらかせる、2)「現実」の中にある価値に目を向け心をとめ発展させていく、3)「ひとりの中にみんなが生き、みんなの中にひとりびとりが完全に生きている」という「個」を確立していくが動態的なデザイン原理であり、目のはたらかせ方のコンセプトとして「川にそって岸がある」の重要性を明らかにした。 (2)スクールリーダー教育の原理・方法論への示唆を得るために、デザインを「合理的な問題解決」とみなすH.サイモン、状況の素材との対話と捉えるD.ショーンとH.ミンツバーグという3者の教育論の原理を比較考察した。ショーンが「なすことによって学ぶ」を原理とする「省察的実習」について、アクションリサーチだけでなくケースメソッドにも価値を置くのに対し、「仕事を通して学ぶ」を原理とするミンツバーグは、ケースメソッドは自分自身の直接の経験からの学習ではないとし、組織開発などのストレスのかかる状況で重要な判断を下す等の直接経験からの学習に価値を置く。本研究がめざすスクールリーダー教育にとって、ミンツバーグのいう、新しいものの見方や視点を与えてくれる理論・概念を手がかりに自らの生きた直接経験の省察を行い、創造的透察(creative insight)を得て、より深く組織や世界を見る・注意を向ける力を高めることの重要性を確認した。 (3)上述の方法論の観点から、院生が探究的な〈学校づくり〉を行いながらその経験を省察する学びのプロセス(自分づくり、理論づくり)を軸にプログラムを構成する広島大学教職大学院「学校マネジメントコース」のスクールリーダー教育を考察した。〈学校づくり〉の中に入り込み、その流れや動きがどこに向かっているかを感じ、その事実・素材の中に未来に向けての価値や可能性を見出し方向づける力を高めることが重要だという示唆を得た。
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