研究課題/領域番号 |
18K02309
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
湯田 拓史 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (20448161)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 寄宿舎 / 学校寮 / 通学区域 |
研究実績の概要 |
先行研究を収集し検証した結果、学校の寮については、法制度上、「寄宿舎」概念が用いられてきたが、法制度上は「共同生活」の有無が重要ポイントなることを明らかにした。先行研究からは、生徒や学生の「共同生活」への統制が問題となってきたが、今回の調査では寄宿舎・寮が「個別化」しており、さらに「大衆化」していることから、先行研究が調査した当時とは異なる現状であることを確認した。 宮崎県内の公立中学校の寄宿舎調査では、学校関係者による取組の内、寄宿舎生への学力向上の取組が、自宅生の保護者からの「公平性」を欠くとの指摘で制限されている実態を明らかにした。この対策については、学校教育だけではなく社会教育の観点から再検討する必要がある。また、通学区域が広域化せざるを得ない地理的条件として、ダム湖周辺地域特有の問題があることを明らかにした。これは、教育行政と河川行政におけるダム開発とがクロスした問題である。 歴史研究については、かつて文部省が英国の寄宿舎に関する文献翻訳した記事を得ることができた。当時の官僚達が、寄宿舎の「エリート主義教育」の要素を日本の学校制度に組み込めるかどうかの検討をしていたことを明らかにした。 今後の調査で得たデータを類型化するための基本的枠組みの構築を行い、軸としては学校設置主体、空間的差異、生徒の属性、舎監や寮監の位置づけ、寮生活の方針、住環境の違いといった項目が重要となることを認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寄宿舎・学校寮に関する先行研究を収集することができた。先行研究の検証から、学校種別の問題点について、中長期的変遷があることを把握することができた。 宮崎県内で寄宿舎を有する公立中学校に訪問し、関係者にインタビュー調査をすることができた。寄宿舎の概要だけではなく、調査対象校固有の問題点を明らかにすることができた。今後の調査項目として「舎監」や「寮監」の職務内容に焦点を当てる必要があることを示すことができた。さらに、これらの成果を日本教育制度学会で発表した。 土佐高等学校の寄宿舎について基礎情報を収集しつつ、現在の寄宿制に対する調査をする基盤を整えつつある。
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今後の研究の推進方策 |
対象地域については、熊本県の学校に焦点を当てる。都道府県別の教育方針による違いの有無を明らかにする。 学校種については、「中等教育学校」に範囲を広げて焦点を当てる。私立学校の寄宿舎については、引き続き土佐高等学校を対象とする。調査については、以前の科研費調査で実施したアンケート長の結果から、寮生の標本を抽出して再検証した上で、インタビュー調査の項目を精査する予定である。インタビュー調査については、土佐高等学校にすでに依頼済みであり、準備が整い次第、実施する予定である。 歴史的変遷については、旧制中学校や高等女学校にとどまらず、師範学校や青年学校にまで範囲を広げて、当時の実態を把握することに努める。その際に、寄宿舎の管理運営で重要視していた項目がどこなのか、それに要する費用負担や人的配置がどうだったのかを調べる。
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