研究課題/領域番号 |
18K02316
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
町 泉寿郎 二松學舍大學, 文学部, 教授 (40301733)
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研究分担者 |
中村 聡 玉川大学, リベラルアーツ学部, 教授 (80352722)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 漢文教科書 / 漢文教育 / 内地 / 植民地 / 台湾 / 韓国 / 満州 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
計画の2年目にあたる2019年度は、昨年に引き続き研究基盤となる資料調査を進めるとともに、研究者が各々のテーマに即した研究を進めて、国際学会・国内学会・研究会における研究発表や紀要・単行本等への論文発表を行った。また共同研究メンバーによる研究会開催を通して共通認識を深めた。資料調査に関しては、国内では玉川大学教育図書館・二松学舎大学東アジア学術総合研究所・沖縄県立図書館・鎌倉市立図書館において実施した。国外では台湾各地(国立台湾図書館・台湾大学・台北教育大学・中国文化大学・台南図書館・・彰化県立図書館・彰化市立図書館)、韓国(檀国大学)において実施した。台湾各地の調査では、収蔵する機関が少ないと見られる地方学校の学校史を見出しほか、台北・台南の各教育機関おいて実際に漢文教育に使用されたとみられる多くの書き込みが残る各種漢文教材(編纂教科書、漢文参考書、尺牘集など)を実見し、資料取集した。沖縄では、琉球王国時代の各種漢文教材や明治期以降の教育史に関する資料を収集した。論文としては、以下のテーマに関するものを発表した。①幕末期の昌平坂学問所から東京大学に至る高等教育における漢文教育について。②地方の漢学塾の動向の一例として新潟地方の漢学塾について。③斯文会などの諸団体を中心に戦前期の漢学について。④文部省検定試験の中における漢文科の沿革について。⑤植民地期台湾の漢文教科書、および植民地期台湾の初等教育とそれに関与した日本人教員に関して。⑥大韓帝国期から日韓併合期における漢文教育について。⑦国士館大学の漢学の系譜について。 口頭発表では、日田・咸宜園の研究を進めて漢文教育の教材となった咸宜園系の人物の漢詩作品について調査報告した。また二松学舎大学に寄贈された大沼枕山・鶴林資料の整理をすすめ諸学校で漢文を講じた大沼鶴林について報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に当たる2018年度、日本国内の資料調査に関してある程度の実績を上げることができた。これを受けて、2年目となる2019年度には台湾に関する資料調査を進め、また沖縄の資料調査にも着手した。日本国内の漢文教育を考える上で、沖縄の漢文教育・言語教育は参照すべき価値があることを再確認した。韓国に関しては、いくつかの研究によって開化期、大韓帝国期、日韓併合期における漢文教育の内容・意義の変遷とその日本国内の状況との相関関係が明らかになりつつある。台湾に関しては、教科書編纂に関わった特定の人物が進捗し、また漢文教材の資料収集に成果があった。2020年初頭に予定していた海外資料調査は新型コロナウィルスの影響によって中止せざるを得なかったが、2年目として相応の成果を収め得たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2020年度は、これまでの2年間の資料調査によって収集した資料と先行研究の分析を踏まえて、成果報告書となる書籍・資料集の刊行に向けて勉めたい。日本国内、台湾、韓国、中国、満洲など各地域ごとの研究状況を踏まえた当該分野の沿革はほぼ把握できているので、これまでに収集した新しい資料を加えていくつかの論文を執筆するとともに、東アジア近代教育史という視野から日本国内、台湾、韓国、中国、満洲各地域の相関関係が明らかになるように勉める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年1・2・3月に海外機関への集中的な資料調査を予定していたが、新型コロナウィルスの影響によって中止せざるを得なくなった。また国内図書館も殆どすべて休止状態が続き、この間の資料収集が困難になったため、当初の計画通りの予算執行が困難になった。2021年度も新型コロナウィルスの影響は一定程度続くと見られるので、そのことを視野に入れ、また2018年度・2019年度においてかなり資料調査に成果があがり、またいくつかの点で研究結果も公表しつつあるので、最終年度には成果報告書となる書籍・資料集の刊行に経費を充当したいと考えている。また刊行物の準備のために、アルバイト等人件費に充当したい。
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