2022年度は、次の4点を実現することができた。第1に、国内の行政とNPOの協働の仕組みに焦点を当てる調査を継続した。デンマークの生涯学習政策で焦点のひとつとなってきた社会的統合の取り組みを、埼玉県でのモデル事業として事例検討することができた。第2に、国内の行政とNPOの協働の仕組みを実践的に考えるNPO法人との社会調査企画を実施できた。第3に、デンマークの生涯学習社会に関する入門書を刊行できた。またデンマーク近代思想に関するグルントヴィの入門書の翻訳について、原稿を完成させることができた。第4に、生涯学習の観点から、新しく、学習都市概念の応用研究に取り組み、ASEM Research Network 6: Learning Cities and Learning Regionsのメンバーとして国際会議に出席し、日本における生涯学習とコミュニティ形成についての報告をおこなった。 研究期間全体をとおして、デンマークでの現地調査を実施できなくなったため、デンマーク社会の協働の仕組みを解明するという課題については、部分的にしか対応できなかった。しかし、第一に、これまでの研究成果を博士論文としてまとめることができ、2022年度「社会的統合と生涯学習─多文化化するデンマーク社会を事例として」が日本女子大学に受理され、博士(教育学)の学位を取得することができた。第二に、デンマークの生涯学習社会に関する書籍『デンマーク式生涯学習社会のしくみ』を、研究会のメンバーとともに出版することができ、生涯学習という観点からデンマーク社会を俯瞰する成果につなげることができた。第三に、行政とNPOの協働の仕組みについて、日本社会における実践的取り組みに着手することができ、NPO法人サービスグラントとの社会調査企画、また埼玉県での多文化共生モデル事業について協議する機会となった。
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