研究課題/領域番号 |
18K02319
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
笠井 尚 名城大学, 人間学部, 教授 (10233686)
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研究分担者 |
川口 洋誉 愛知工業大学, 工学部, 准教授 (60547983)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 学校図書館 / 学校施設 / 調べ学習 / 読書 / 読解力 |
研究実績の概要 |
愛知県I市では、施設づくりに端を発した一連の学校図書館改善の活動によって、学校図書館コーディネーターの設置や学校図書館利用カリキュラムの作成、学校連携司書の中央図書館への配備、と事業を発展させることができた。学校施設づくりの成果の一側面として捉えることができる。この事業展開につながるものとして、令和2年度より次期のM小学校の改築(学校図書館整備)に着手した。 同I市立G小学校に開館した地域図書室兼高学年図書館では、同校の改築における子ども参加によるタイル画作成の施工ワークショップに合わせて、中央図書館と協力して特別展示を行った。学校もこのことを前向きに捉え、展示物はワークショップに参加した児童のクラスを巡回した。学校図書館の環境づくりと運営の充実を並行させて展開する取り組みは、教委や中央図書館との連携により、学校教育の充実のための方策として重視されている。 長野県C市における小中一貫校建設では、小中図書館司書へのヒアリングによって、学校図書館スペースを設計する材料となる、図書館活動の諸要素をピックアップできた。次年度には、設計者と協力してそれらを整理し、設計に反映する。 情報収集としては、北海道地区の子ども図書館や書籍を貸し出さない図書館のすぐれた取り組みについて知ることができた。長野県立図書館の学びラボの取り組みや高知の課題解決型図書館としての活動は、大変示唆的であった。 学会報告では、日本学習社会学会大会において、課題研究のなかで、施設整備(ハード)の視点から学校図書館についての問題提起をすることができた。次年度には、学校におけるカリキュラムマネジメントの側面を意識した報告を行うことが要請された。I市では、この間の学校改築の取り組みのなかでの、とくに学校図書館づくりについての視点や工夫を報告書としてまとめることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度前期においては、コロナウイルス感染症対策のため出張が禁止となったので、学校建設の実践活動や図書館事例の情報収集が大幅に滞った。それでも、外部活動の禁止期間のわずかな合間を縫って、滋賀、石川、北海道、高知、長野などの参考にすべき図書館の取り組みについての情報収集が行えた。コロナウイルス感染症蔓延の厳しい状況下のわりには取り組みを進められたと思う。長野県C市には、年度末のわずかな期間しか情報収集に向かえなかった。愛知県I市については、令和2年度、次に改築に取り組むM小学校の設計者の選定が行われた。教委、設計者、コーディネーター(当該研究者)のよい協力関係のなかで、よりよい学校図書館づくりの取り組みが始められた。次年度もこの活動を継続できそうである。 一方、次の点において、研究の進行は速度が弱められた。コロナウイルス感染症対策による活動制限の影響が大きい。(1)福井県T市へは、実際にまったく訪れることができなかった。設計者との連携も限界があった。長野県C市の学校建設においても、本務校・先方自治体双方の出張規制により、出かけて情報収集することが困難であった。(2)調査については、八幡浜の日土小学校や隠岐の図書館へは行けなかった。また、その他にも多数調査すべき対象を見つけることができたが、出張規制のために実現しなかった。 愛知県I市の実践においては、出張規制が緩められた期間に取り組みを進めた。出張が制限されたなかでも情報収集のための施設調査を敢行し、ある程度の成果も上がっていると考えられた。しかし、コロナ対策のための研究の制約もかなり厳しかったと言える。そのため、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の取り組みは、次のような枠組みで継続的に進める。 1)愛知県I市での実践研究は、M小学校の基本設計から実施設計の過程で、これまでの学校図書館研究の成果を盛り込んで、教委や設計者と協力して、新しい学校図書館像をスペース整備の点で考案する。 学校図書館改善として展開されてきた一連の方策については、教委の取り組みに協力して、ソフト面の改善を支援したい。教委との協議によれば、施設整備のコーディネーターとしての本研究者の立場から、図書館利用カリキュラムの改善や連携司書の任務に対する支援も行っていけるものと考えられる。改善された学校図書館環境を有効に利用するためには、発展的に整えられてきた仕組みの内実を見直し、充実させる必要がある。昨年度の実践の成果を踏まえると、学校図書館での企画の実施についても継続して提案や支援ができそうである。 2)長野県C市での小中一貫校図書館の設計について、設計者に協力して、昨年度の調査によって抽出した要素を盛り込んで、新しい学校図書館像を提案する。 3)昨年度に引き続き、日本学習社会学会大会での課題研究発表を依頼されているので、次年度はとくにカリキュラムマネジメントの視点をつよく盛り込んだ学校図書館の建築的課題についてまとめたい。 4)情報収集については、北海道の事例の継続調査も必要であると感じられるほか、和歌山地区、隠岐地区、八幡浜、宮崎地区など、さらにコロナ感染が収まれば、関東・関西方面へ、新しい図書館事例の環境整備と運営の取り組みについての情報収集を行いたい。中央図書館と学校図書館の連携を行う石川の事例についても、再訪して学校の様子を確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度終盤以降のコロナウイルス感染症の影響が大きく、調査活動と現場実践が必ずしも順調には進んでいないことが使用額が生じている最大の理由である。感染症の収まり具合にもよるが、昨年同様、制限の合間を縫って最大限の取り組みを行うとともに、研究期間の延長も視野に入れて、研究費の充実した活用を図りたい。
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