研究課題/領域番号 |
18K02328
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
片岡 洋子 千葉大学, 教育学部, 教授 (80226018)
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研究分担者 |
瓦林 亜希子 都留文科大学, 教養学部, 准教授 (10780249)
山田 綾 四天王寺大学, 教育学部, 教授 (50174701)
佐藤 隆 都留文科大学, 教養学部, 教授 (70225960)
LEROUX Brendan 帝京大学, 外国語学部, 准教授 (80610203)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フレネ教育 / 中等教育 / 学習の個別化 / 学習の協同 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、2019年4月29日より5月4日まで、ラ・シオタとマルセイユの中等教育におけるフレネ教育の視察調査を行った。 ラ・シオタではジャン・ジョレス中学校とリュミエール高校を訪問し、授業見学、教師、生徒、保護者、卒業生との座談会形式での聞き取りを実施できたが、スタートから11年目にしてフレネクラスのための副校長を含めた専任教員の配置等の予算措置が危うくなっている現状が語られた。しかし同時に、そうした危機的状況について教員、生徒、保護者が情報を共有しながら一体となってフレネ教育のカリキュラムと実践をつくっていることもわかり、それもCLEFの協同の実践を象徴していることを認識できた。 マルセイユのロンシャン中学校では、授業参観の他に、校長から学校経営全体方針の説明を受け、フレネクラスの設置が学校全体にどのような影響をもたらすことが期待され、実際にあらわれている効果を校長がどう評価しているかを知ることができた。また、各教科の教師インタビューを分担して行い、教科ごとのフレネ教育の取り組みの違いや課題について話を聞くことができた。 帰国後、国内での研究会では、視察調査の録音・録画のデータを整理しながら、ジャン・ジョレス中学校とロンシャン中学校のフレネクラスの設置にいたる経緯、教員配置、予算、カリキュラムの違いについて検討してきた。そして、それらが日本の中等教育にどのようなインパクトを与えうるかを明らかにするために、日本の教育改革と中等教育の現状についての認識を共有するための議論を行った。最終年度に研究成果を書籍化するための作業も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラ・シオタのジャン・ジョレス中学校でフレネ教育(CLEF)の11年間の経緯と実践の発展について、教師、生徒、保護者、卒業生、研究者等、それぞれの立場からの評価等を聞くことができている。またラ・シオタのフレネ教育クラスの設置とは異なる方法で、マルセイユのロンシャン中学校で始まったフレネ教育についても視察調査を同時に行うことができている。 ジャン・ジョレス中学校はフレネ教育クラスを希望する生徒が入学するが、ロンシャン中学校では本人の希望とは無関係に無作為に8クラス中の1クラスであるフレネクラスに生徒が振り分けられる。ただし1年目は、様々な問題を抱えた生徒がフレネクラスに入った方がよいと考えた小学校の教師によって生徒の傾向に偏りができていた。その学年と全く無作為に振り分けられた生徒たちの違いは授業中の様子でも明らかだった。しかしそれらの生徒も含めた生徒・保護者との座談会では、フレネ教育について知識も関心もなく、最初は戸惑いながらも、フレネ教育によって主体的に学ぶことを身につけることを実感していったという話を生徒や保護者から聞くことができた。 日本の中学校教育にどう応用できるかという点では、ジャン・ジョレス中学校だけでなく、ロンシャン中学校のフレネ教育クラスを調査対象にできたことに研究的意義を見いだしている。今年度の調査ではロンシャン中学校のフレネクラスの3年目の状況を見ることができ、公立中学校にフレネクラスを設置したことによって、学校教育をどのように変えようとしてきたのか、これまで得てきた資料やデータで描き出す見通しが立ってきている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年、2019年の2年連続での現地視察調査で得られた資料やインタビューデータなどをもとに、フランスと日本の中等教育における問題の違いと共通性をふまえながら、現代の中学生にとって意味のある学びとは何か、それは学校教育でどのようにして現実化するのか、それを阻むものは何かを考察する。 中学校でのフレネ教育に見るフランスの新教育の現代的展開と、自由の森学園中学高校など日本における新教育の現代的展開例とをつきあわせながら、中等教育における新教育の可能性を探求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度の配分額では追加の調査等のための費用が不足することが見込まれたため、研究資金を残して繰り越した。 最終年度に、日本国内での現代的な新教育の実践展開について現地調査をおこなう予定であり、主に研究会と調査の旅費に使用する計画である。
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