研究課題/領域番号 |
18K02329
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
古屋 恵太 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50361738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 劇化 / 遊び / プラグマティズム / デューイ / アダムズ / ミード / ボイド / 誠実 |
研究実績の概要 |
2019年度(平成31、令和元年度)の研究実績は次の二点にまとめることができる。 第一は、現代の学習理論の基礎とされているデューイとヴィゴツキーという二人の思想を演劇や美的経験という観点から再解釈する試みを、「教育と演劇に関する研究会」(主催者:古屋恵太(東京学芸大学)、高尾隆(東京学芸大学)、岡花祈一郎(琉球大学))を設立して開始したことである。本研究会の第一回(2019年8月)にて、研究代表者は「『劇化』(dramatization)と『遊び』(play)の観点によるシカゴ派プラグマティズムの再解釈」と題した報告を行った。当初予定していなかったことではあるが、本研究課題が、最新のヴィゴツキー研究とも有意義な関連性を持つものであることを知ることができた。 第二は、デューイの科学的・美的探究を、現代の教育理論との関わりで考察する応用的研究を行い、「ジョン・デューイにおける『探究』と『誠実』に基づく学び―実践知を支える『真正性』を問う―」というタイトルで論文にまとめたことである。本論文は、日本学校教育学会『学校教育研究』第34号に査読付き論文として掲載された。本論文では、国際的な教育政策動向に影響を与えるほどとなっている「真正の学び」(authentic learning)を批判的に検討する視点を、「誠実」(sincerity)という態度を重視するデューイの探究論を考察することで提起したものである。「劇化」と「誠実」という一見矛盾する概念をデューイが重視したことにこそ、デューイが教育に求める探究の特質があることを明らかにすることができた。 なお、昨年度の研究実績である拙稿「デューイとアダムズにおける『劇化』の教育思想」が、田中智志編『教育哲学のデューイ―連環する二つの経験―』(東信堂、2019年)に掲載されたことも付記しておく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究会を設立し、報告を行ったこと、査読付き論文が掲載されたことは大きな成果だと考える。また、昨年度、出版社の事情で出版が遅れていた田中智志編『教育哲学のデューイ―連関する二つの経験―』も10月に刊行された。しかし、研究代表者に子どもが誕生したため育児により、国内・海外出張を行うことが全くできず、資料収集が不十分であった。また、このため、今年度、最も力を注ぐ予定であった、ジョージ・ハーバート・ミードとネヴァ・レオナ・ボイドの「遊び」概念の研究については、詳細な分析を行い、論文とするにはいたらなかった。このため、進捗状況としては、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、2018年度に続いて2019年度でも執筆にいたらなかった、ミードとボイドの「遊び」論や両者の思想的関係を扱った論文を完成することを9月までに行う。発表の招待を受けた国内学会で2020年9月に報告を行い、2021年9月の学会誌掲載を目指す予定である。 次に、ミードとボイドの思想的関係を精緻に論証するため、また、より一般的にシカゴ派プラグマティズムの思想史的背景をつかむため、海外出張を行い、資料収取を行うことが不可欠であるが、新型コロナウィルスの問題があり、実現できない可能性が高い。そこで、その場合には、研究代表者の入手可能な資料で研究が可能な、デューイにおける「遊び」概念、進歩主義教育運動における「遊び」の位置づけの再検討を行うこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.研究代表者に子どもが誕生し、育児の必要が生じたため、国内・海外出張を全く行えなかったこと、2.稀少性の高い洋古書が比較的安く入手できたこと、以上二点が次年度使用額が生じた理由である。 次年度使用額については、国内・海外出張とそれに伴う資料の入手によって2020年度に使用する計画ではあるが、新型コロナウィルスの問題が収束していない場合には研究期間の延長申請も視野に入れて対応する。
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