研究課題/領域番号 |
18K02329
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
古屋 恵太 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50361738)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ジョン・デューイ / ジョージ・ハーバート・ミード / 遊び / シカゴ・プラグマティズム / 仕事 / 専心的な活動 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績は次の二つに分けて説明することができる。 第一に、2020年度に教育思想史学会第30回大会で示した本研究全体の見取り図(シンポジウム報告「『遊び』(play)と『劇化』(dramatization)から見たシカゴ・プラグマティズムの思想史―G・H・ミードとN・L・ボイドを中心に―」)のうち、ミードの遊び論について研究を完成したことである。その成果は、「G・H・ミードの思想における遊び論の再検討―シカゴ・プラグマティズムの思想的系譜の見直し―」という題目で、教育思想史学会『近代教育フォーラム』第30号(査読有り)に掲載された。 第二に、ジョン・デューイの遊び論に関して、彼の盟友、ジェーン・アダムズ(Jane Addams)のソーシャルセツルメント施設であるハルハウスの活動との関係で、資料収集と分析を行い、アメリカにおけるフレーベル派とデューイの思想との関係を再検討する必要があるとの見通しを得たことである。当初はボイドに関する資料収集をアメリカで行う予定であったが、コロナ禍で不可能となったため、研究範囲を縮小し、国内でも実施可能な研究対象として、デューイ及び彼の遊び論を選択した。その結果、すでに定説として論じられているのとは異なる両者の関係を見いだすことができた。また、それに基づいて、デューイにおける「遊び」、「仕事」(work)、「専心的な活動」(occupation)の諸概念の中身やそれら相互の関係について再定義することが可能だという発見をすることができた。 第三は、第二の研究から派生して、デューイの「遊び」‐「仕事」論を媒介する「専心的な活動」の思想史的文脈として、「作業療法」(Occupational Therapy)の興隆との関わりを論じるという着想を得たことである。第二と第三の成果を総合することが最終年度の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ボイドに関する研究については、2020年度の学会発表での議論の結果として、さらなる資料収集の必要が明らかとなっていた。ところがコロナ禍で、国内での資料収集、国外での資料収集ができなかった。このことが、「やや遅れている」と判断する主な理由である。2021年度はやむなく、当初予定していた研究範囲を縮小し、すでに多くの先行研究が存在するデューイの遊び論に関して資料収集と分析を行った。その際、所属研究機関を通して、デューイ書簡集のデジタル版を購入できたことや、最新の先行研究のなかに、フレーベル派とデューイとの関係を問い直すものや、当時の作業療法の思想史とハルハウスとの関係を示唆するものがあったことで、研究そのものは大きな発展の可能性を得たと言える。最終年度である2022年度はこれらについてまとめあげることを目指す。ボイドについては、別の研究課題として、改めて取り組むことにしたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
国外での資料収集をあきらめ、研究範囲を縮小する判断をしたため、最終年度の課題は明確となった。アメリカにおけるフレーベル派とデューイとの関係を扱った資料と、ハルハウスやデューイと作業療法との関係を把握するための資料を引き続き収集して分析することとする。そして、それを論考の形へとまとめあげる。最後に、デューイ、アダムズの劇化論、ミードの遊び論にその論考を加えた研究成果を報告書として完成することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、国内出張、国外出張ができず、旅費の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。研究期間の延長が認められたが、国外出張と研究範囲の縮小のどちらが合理的であるかを検討した結果として研究範囲を縮小したため、2022年度も旅費は国内出張のみに限定される。次年度使用額は、国内にいても可能な多様な文献収集に用いる予定である。また、最終年度に作成予定の報告書の印刷費にも使用予定である。
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