2022年度に実施した研究では、ジョン・デューイの「遊び」(play)論を、アメリカにおけるフレーベル主義と深い思想的・実践的関係にあったものとして位置づけ直した。デューイとフレーベル主義との関係についてはデューイによるフレーベル批判が注目されることが多い。しかし、デューイの盟友、ジェーン・アダムズのソーシャルセツルメント施設であったハルハウスが提供した教育において、遊びがどのように位置づけられているかを見ることで、デューイとアダムズらシカゴ・プラグマティストが当時のフレーベル主義者とともに遊びの実践を成立させていたことが明らかとなった。 デューイは遊びと仕事(work)を連続的関係にあるものと捉えたフレーベル思想を継承しており、occupationを遊びと仕事の両者を特徴づける概念として独自に定義していた。occupationを「原初的作業」の意味で理解することで、このことがより明瞭になることを論じた。この研究内容は、「デューイにおける遊びと仕事―アメリカフレーベル主義との関係を手掛かりに―」というタイトルで、研究期間全体の成果を冊子化した『シカゴ派プラグマティズムの実演の思想と想像力概念の機能に関する教育哲学的考察』と題した研究成果報告書の第二章に収めた。 研究期間全体を通して、1.アダムズのハルハウスの観点からシカゴ・プラグマティズムを検討することの意義の考察、2.フレーベル主義との関連からのデューイの遊び論再考、3.デューイとアダムズにおける「劇化」(dramatization)の思想の検討、4.ジョージ・ハーバート・ミードの遊び論の検討を行った。以上から、シカゴ・プラグマティズムの教育思想は単に子どもの経験や問題解決を重視するものではなく、「原初的作業」を行い、過去の人類や他者になるという活動を核とするものであることが明らかとなった。
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