研究課題/領域番号 |
18K02336
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
村山 詩帆 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30380786)
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研究分担者 |
伊井 義人 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (10326605)
植田 みどり 国立教育政策研究所, 教育政策・評価研究部, 総括研究官 (20380785)
小島 佐恵子 玉川大学, 教育学部, 准教授 (40434196)
丸山 和昭 名古屋大学, 高等教育研究センター, 准教授 (20582886)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 地域格差 / 高校収容力 / 民営化 / 在外教育施設 |
研究実績の概要 |
通商政策においてサービス分野となった教育分野で世界的に進行している民営化のプロセスに注目し、豪・台・英・米との国家間比較制度分析を行うため、各国のローカルな位相に関する定性的・定量的研究に取組んだ。マクロな国家レベルの分析から析出される諸関係を、ミクロな地域レベルに代用することから生じる「生態学的誤謬」の可能性について検討するためのデータベースの構築を進め、日本の中等教育機会に関する諸指標を用いて暫定的に分析を行った。 分析の結果、(1)中等教育機会を構成する高校収容力の格差は都道府県より市町村間で大きく、やや拡大していること、(2)相対的な収容力の都鄙格差はあるが、絶対的な都鄙格差は縮小しており、私立学校が人口密集地域に集中する傾向にはないこと、(3)学区制度や地域の教育機会に制限されない高校教育へのアクセスが市町村単位の収容力におよぼす効果は明瞭でないこと、(4)高校収容力の私立学校依存度が深まり、市町村では地方財政、都道府県では教育行財政に依存していることなどが明らかになった。ここからは、早期のトラッキングを是としない教育へとシフトする世界的な趨勢には、異質なプロセスが内包されている可能性が示唆される。 また、グローバル化により生じる地域間の統合を、国家による政治的なトップダウン型の「地域主義」と民間セクターが主導するボトムアップ型の「地域化」からなるプロセスとして想定し、在外教育施設の新設および統廃合の状況に当てはめた場合、「エスカレーター校」と呼ばれる日本に特徴的な制度が存続しているなど、後者の「地域化」が少なからず観察される。これらは個別事例でありながら、グローバル・ナショナル・ローカルの3つの位相に注目するだけでは捉え切れない地域統合の複雑な過程を反映している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大により調査対象国への渡航が制限され、国内調査によって入手できない資料・データ、とりわけ地域レベルの資料・データ収集を事実上断念せざるを得ない状況に追い込まれた。その結果、調査対象国の内部にあるTL3レベル(都市・中間・農村)の時系列的な比較分析に着手できなかった。地域間にどのような分散が生じ、それらがいかにして生じているのかを解明する余地が依然として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
TL3レベル(都市・中間・農村)より小さな地域データの詳細と所在を把握している台湾など、海外への渡航制限状況に注目し、海外調査に必要なレベルまで制限が解除された場合、資料・データの収集を行う。海外渡航が難しい状況が続くようであれば、国家間の時系列分析を進めると同時に、海外の民間企業が提供する地域データを一部購入し、どこまで地域レベルの比較分析が可能であるのかを検討するなど、可能な範囲で調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により海外渡航が制限されたことを受け、国内では入手できない資料・データ収集などの調査研究活動を断念せざるを得なくなった。前年度までの調査により、地域レベルの時系列比較を可能とする資料・データの詳細と所在はすでに調べていたため、渡航制限の緩和を期待したものの、年度を通して極めて困難な状況にあった。その結果、海外渡航を伴う調査研究に使用する予定であった費用については、次年度使用額とするのが望ましいと判断するに至った。 次年度に海外渡航制限が緩和されることがあれば、短期間であっても渡航して最低限の資料・データを収集することとし、次年度使用額は主として海外渡航、成果発表の費用に充てる。海外渡航制限が難しい状況であった場合、海外の民間企業が提供する地域データを部分的に購入するなど、欠損するデータの補完に努め、データベース構築や報告書の作成など成果発表の費用として使用する。
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