公教育の設計・構想に際しての、共通了解可能な構想指針原理を持たないために混迷を続けてきた、近年の教育改革・構想、さらには教育学それ自体の問題を根本から克服するための「教育学のメタ理論体系」を体系化した(『学問としての教育学』日本評論社、2022年)。また、このメタ理論体系に基づいた、具体的な研究や実践理論群の例示も展開することができた(「公教育の本質に基づく学びの構造転換の効果測定ツール」2022年、等)。 上記メタ理論体系は、教育学の哲学部門、実証部門、実践部門、それぞれのメタ理論を解明することで、教育学を高度な総合学問、応用学問へと発展させるものである。国内外の多くの教育哲学者がこれまで挑戦しながらも、十分に成し遂げることができなかった研究であるという意味において、相応の学術的意義を有しているものと考える。また、上記メタ理論体系は、教育構想の指針原理を解明するとともに、教育学がその指針原理に沿っ た実証研究や実践理論・方法の開発をすることを可能にするため、たとえば国や自治体の教育政策に重要なインパクトを与えることができる。実際、上記の効果測定ツールは、名古屋市における名古屋スクールイノベーション事業においてすでに用いられており、今後はこの改訂版が、一般社団法人School Transformation Networkingによって、全国の自治体や学校に無料で提供される予定である。今後のEBPMを哲学によってさらに支えることで意義深いものにしていくことができるものと思われる。
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