研究課題/領域番号 |
18K02339
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研究機関 | 山梨県立大学 |
研究代表者 |
清水 一彦 山梨県立大学, 国際政策学部, 学長 (20167448)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アーティキュレーション / 教育接続 / 高大接続 / 大社接続 |
研究実績の概要 |
初年度は、教育におけるアーティキュレーションの基本理念と歴史的課題を明らかにした。その結果、得られた知見は以下のとおりである。(1)アーティキュレーションは、単線型学校体系における第二次的作業であり、わが国においては戦後の教育改革の重要な制度課題であった。それは、学校制度における縦の接続と横の接続、そして学校制度と社会との斜めの接続から成り、問題領域としては構造的側面、内容的側面及び運営的側面から構成されるものであった。新たに誕生する専門職大学の構築は、まさしく縦、横、斜めの接続のすべてに関わり、主に構造的側面におけるアーティキュレーション作業と位置づけることができる。(2)およそ臨時教育審議会から続く30数年以上に及ぶ教育改革は、戦後教育改革の実質化を指向するものであり、それはアーティキュレーションの確立のための模索的改革と位置づけることができる。70年にわたる戦後の高等教育の歴史において、第二次的作業としてのアーティキュレーションの構造的側面での改革は遅々として進まず、専門職大学の制度設計においてそれを解決する絶好のチャンスであったと考える。(3)斜めの接続をも視野に入れながら、高等教育におけるアーティキュレーションの構造的側面の改革を、これまでの学術教育体系とは別に新たな職業教育体系を構築し、しかも日本の固有の体系とする改革の必要性を強調した。 とくに(3)に関しては、以下の4点を求めた。 ①専門高校で学ぶ若者に夢を与え、学修の継続性を制度的に保障するとともに、社会人の学び直しにも寄与するような制度を設計する。②既存の学術研究の成果を基盤とする大学や短期大学、さらには高等教育機関としての高等専門学校に無用の混乱や不信関係を生じさせない制度設計とする。③日本が世界に誇れる高等専門学校の歴史と実績を生かし、縦と横、斜めの接続を担保するシンプルな職業教育体系を形づくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
戦後70年の間に高等教育の状況は一変しているが、法規定は70年前のままである。高大連携や高大接続が教育課題になったのもつい最近の出来事である。法整備の遅れは著しいといわざるを得ない。この点に関しては、アメリカの大学におけるアーティキュレーションの歴史的展開とは異なることが理解できた。 すでに6割近い学生が高等教育(専門学校除く)に進学し、8割の学生が中等後教育に進学する現在、高校からのスムーズな移行は保障されなければならない。ここにアーティキュレーションの第二次的作業の必要性が求められる所以があるが、さらに移行期の教育の創造、ひいては「日本型高等教育」の創造が要請される。これがわが国の高等教育におけるアーティキュレーションの基本的な課題が存在する。こうした歴史的課題をアメリカとの比較の上で明らかにすることができた。 以上より、初年度はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカにおけるアーティキュレーション概念の整理を行ったので、次に、アーティキュレーションの問題領域を3つに分け、それぞれの教育課題を明らかにしていきたい。 具体的には、まず第一に、構造的側面として、各学校段階の区分の仕方(いわゆる区切り)や入学試験制度、編入学制度、課程分化を、第二に、内容的側面として、カリキュラムの問題、教育方法、授業体制のほか、教員の問題や生徒の適応問題、インクルーシブ、課外活動・学校行事の問題を、そして第三に、運営的側面として、1つは学習者に関する情報交換及びその活用、2つは主に教員間の協働的作業やコミュニケ-ションの機会、3つは進路指導を中心としたガイダンスである。 アメリカの大学の歴史の中で、以上の領域や問題がどのように取り上げられ、検討されてきたかを明らかにする。つまり、設定した3つの制度枠組みに基づいてアーティキュレーションの問題領域や具体的課題を明確にすることである。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部予定していた調査が実施できなかったが、研究は順調に進んでいるため、今年度の国内外の調査の費用に充てて、さらに研究を発展させたい。
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