研究課題/領域番号 |
18K02341
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
生島 美和 帝京大学, 教育学部, 准教授 (80535196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 地域博物館 / 防災学習 / 震災伝承施設 / 震災遺構 / 語り部 |
研究実績の概要 |
防災学習とはまさに、住民が地域で起こりうる災害について科学的・文化的に探究し、その対策を柔軟に考え人間関係を紡ぎながら、ともに命を守り助け合う意識を高める地域課題である。本研究課題では、そうした地域課題に向かい合う学習の場がいかに形成されてきているのか、そして、そうした実践はどのような理論的基盤に支えられているのか、を明らかにしようとしている。 2021年度は、「科学に基づく災害の備え」について繰り返し主張してきた棚橋源太郎の「郷土博物館論」がいかなる博物館構想のもとに位置づいていたのか、特に1951年に制定された博物館法に注目し、市町村立博物館の教育機能および文化財保護法との関係から明らかにした。「文化財保護」を一つの視点とした背景には、法改正により、地域の文化財の保存・活用が地域住民の手に委ねられるようになってきていること、東日本大震災以後に整備されてきた震災遺構や震災伝承施設が、今後地域の災害・防災について語り継ぐ資源として整備される中で、それらが住民による活用・学びの場としていかに機能を果たしうるか、検討していくためである。 こうした視点に立ち、震災伝承施設のパイロットサーベイを行ったところ、地域住民による学びを通じた活用や運営、「語り部活動」などを通じた見学者などの受入れにより、一時的なモニュメントではなく、震災の経験を共有し語り継ぐ場、すなわち「対話による学習空間」が生み出される可能性を持つものと捉えられてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の所属研究機関の異動、およびコロナ感染拡大を背景とした業務増と移動の困難から、本研究に十分なエフォートを向けることが困難であったため。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災後に整備が進められてきた震災遺構を含む「震災伝承施設」について、持続可能性のある交流の場や組織がいかなる主体によって形成されているか、また、地域の防災学習の資源となるべく住民による運営や担い手づくりいかに行われてきているのかに注目し、その保存・活用の意義について検証していくことにしたい。 その際、特に次の2点に注目する。 1点目は、2018年以後に登録制度が開始しネットワーク化されてきた「震災伝承施設」について、保存・管理・運営・学習の場としての活用方法について総合的に検証することである。 2点目に「震災伝承施設」を拠点として提供されている学習機会として「語り部活動」があるが、この活動は、住民による地域の復興・活性化の活動、震災遺構などを形骸化せずに防災に対する学習資源として有用化し続けるために有効であると注目する。語り部活動を通じ「語る-聞く」の関係によって形成される学習空間、「学びのダイナミズム」を分析することで、震災伝承施設において、対話を通じながら地域課題・暮らしに根付く学びをいかに生み出しうるのか、検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大や研究代表者の業務上の理由により本研究が予定通り遂行できなかったため。 今年度は別途記載した研究課題のもとで、計画的に使用する。
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