本研究課題ではこれまで、東日本大震災の津波・原発事故の被災地域において、震災遺構や地域博物館を拠点とした語り部活動に注目してきた。特に被災地域外からの支援者や被災経験や地域防災を学ぼうとする学習者に対し、被災経験者や被災地域住民が語り部活動を行うにあたっては、語り部自身が震災以前から自ら営んできた暮らしや文化、地形や歴史、また「現在」の復興や地域状況・課題について把握するといった地域学習に基づくものであることが明らかにされてきた。 こうした語り部活動のなかには、「民話の会」のような被災前から社会教育活動として続けられてきた内容や方法を拡張する形で実施されているものや、住民の学習活動として新たに養成しようと組織化が図られるものがあるが、いずれも、来場者との「語る-聞く」といった対話を行うことが前提となる。したがって対話による学習空間において、語り部から語りを「聞く」側、いかなる学びを得ているのかを明らかにすることを試みた。 本年度は、特に未災地域に暮らす学習者(訪問者)が、震災遺構や被災地域において語り部の語りを聞き、対話することでの学びの様相について、学習者を対象としたアンケート調査を行った。調査の結果、を通じ、①当該の被災地への関心や被災経験の分有しようとすることでの当事者意識の形成、②マスメディアを通じて得る情報と異なる多様な声や背景があることへの認識、③自らの暮らしを相対化し、地域を総合的に把握しようとする視点や社会参加意欲の獲得、がなされてたことが明らかになった。
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