研究課題/領域番号 |
18K02344
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
渡辺 敏 実践女子大学, 生活科学部, 准教授 (90739559)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 空間認知 / 幼児教育 / 図形教育 |
研究実績の概要 |
今年度は幾何学玩具のポリドロンを日野市立の公立保育園の自由遊びの玩具として設置し、その遊ぶ様子を観察することを行った。3歳児の遊び方には2つの特徴が見られた。1つ目の特徴は平面図形を平面上につなぎ広げることはするが、立体を構成することはあまりしない傾向にあるという事である。これは3歳児の手先の器用さも関係していることが考えられる。平面上であれば比較的容易に面と面をつなげられるが、立体を構成しようと考えると、面を立てなくてはいけない。手先が器用でないとこの動作が難しいため平面の遊びが中心となったことが考えられる。2つ目の特徴は面と面をつなぐときに辺の長さを気にしないでつなげる傾向があるという事である。大人であれば、正方形と三角形をつなぐ場合、同じ長さの辺同士をつなげたいと考える傾向があるが、3歳児は長さを気にせず、面同士をつないでいた。これは3歳児の視力と長さの認識能力の関係が考えられる。 4歳児の遊びの特徴として2点見られた。1つはある定型の立体を何度も作る傾向があるという事である。同じ立体を作れることに達成感があり、繰り返し遊ぶ姿が見られた。もう1点は、新たな形を工夫しながら作る姿が見られたことである。この遊び方をしていた4歳児は2名のみである。作りながら、失敗しながら出来上がる立体を観察し、新たにつける面を観あげる姿が見られた。このような取り組みからは、見たこともない立体が生まれたため、他の友達も関心を持ち、自分でも作りたいという思いをもっていたようである。しかし、この2名のようにはなかなか作成できないために保育士に援助要請を行っていた。幼児の立体を用いた自由遊びの中で、「作りたいけど、作れない」状態を保育士が看取り、援助することで、より立体に興味関心を持つこと、また、構成を通して立体の認知が進むことが予想された。 この結果は2019年8月の日数教、沖縄大会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保育園の幼児のポリドロンを用いた立体遊びの様子から、4歳児に具体的に実施したい保育案を考えることが出来た。4歳児はポリドロンを用いた立体として6角形を底面として、側面に二等辺三角形をつけた6角錐を多く作成していた。出来上がった六角錐は逆さにして、コマとして回して遊んでいた。このような活動を、クラス全員で取り組む保育案を考えている。 1時間目にポリドロンを用いた自由遊びを通して様々な立体を作ることに慣れる。2時間目に、各自、六角錐を作り、回して遊ぶ。3時間目に底面を六角形から、五角形や正方形、正三角形にしてもまわるかどうか考える活動を行う。この活動の比較の中から、どのような立体の底面だとよく回るのかを考える活動をする。4時間目は、六角錐の側面を何色の面で作ると回した時にきれいに見えるかを考える活動を行う。この活動を通してシンメトリーの美しさに気付くようにする。 このような案を保育園の先生と再度検討し、実施し、幼児の立体を通した学びについて知見を集めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後、まずは保育園、幼稚園で立体を用いた活動案を先生方と相談の上、実施し、幼児教育の中でできる立体の活動についての研究を進めたい。この活動を通して、3歳児、4歳児がどのような立体の認識はでき、どのような認識を苦手とするのかを明らかにしたい。 また、小学校2年生の「はこの形」の学習の中で、4年生の子どもたちが方略として使う事の出来る「底面を起点として、側面を念頭操作で組み立てる」考えの、素地指導はどのようにあるべきかを、実際の授業を通して明らかにしていきたい。そのために、事前のペーパーでの展開図の念頭操作の調査や、指導案を担任の先生方と相談することを実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は保育園の観察が中心であったため予算を使う機会が少なかった。次年度は、ポリドロンの新規購入、学会での発表等で使用予定である。
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