研究課題/領域番号 |
18K02346
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
上野 正道 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (50421277)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | デューイ / 民主的シティズンシップ / 学び / 東アジア / 学校改革 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代プラグマティズムにおける市民学習と民主主義の主題について、学校の公共性の比較から考察するものである。特に、アメリカのジョン・デューイが民主主義を「生き方の問題」と理解して学校改革と公共性形成を実践したことが、現代のヨーロッパと、日本と中国の東アジアでどのように展開されたかを理論的、実践的に考察することを目的としている。今年度の研究成果の内容とその意義として、以下の2点をあげることができる。 第一に、現代のヨーロッパの教育思想におけるデューイの市民学習と民主的教育の理論的発展を考察したことである。なかでも、デューイからガート・ビースタの教育理論への発展を明らかにした。ビースタは、デューイの教育哲学をアレントやレヴィナス、ランシエールといったヨーロッパの思想に結び付けて、民主的教育を「生き方の問題」としてよりも「政治的主体化」の問題として捉える。教育の機能を「資格化」「社会化」「主体化」の3つに分類し、「主体化」としての教育を擁護するビースタの主張をもとに、それが現代のヨーロッパ・シティズンシップの教育において果たす意味を明らかにした。 第二に、日本と中国の東アジアにおける民主的な学校、学び、教育の理論を考察したことである。デューイとプラグマティズムの教育理論は、東アジアの伝統の中にある学校や学びの理解にどのように接合したのかを検討した。今日、デューイの教育理論は、シティズンシップの形成に向けた主体的、探究的、協働的、コミュニケーション的な学習を擁護するものとして広く浸透している。一方で、東アジアには、それらの学習だけでは十分に捉えることのできない伝統的な学校観や学びの理解が存在することも事実である。デューイの民主的教育の理論が、東アジアの教育の中で再構成されてきたプロセスを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定どおり、順調に進んでいる。一方で、コロナ禍で、海外での調査や海外を訪問した学会発表については、予定を変更せざるを得ない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度もまた、プラグマティズムに基づく市民学習の国際比較について、思想的、実践的な観点から研究を継続することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、今年度はコロナ禍の中で、国内外の学会開催が中心や延期、またはオンラインに切り替わり、出張旅費が当初の予定よりも縮小されたことがある。次年度に向けて、引き続き研究を継続し、図書費、調査費、学会参加費、論文の投稿料などに使用予定である。
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