研究課題/領域番号 |
18K02349
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
藤井 啓之 日本福祉大学, 経済学部, 教授 (70253044)
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研究分担者 |
高橋 英児 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40324173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 価値教育 / 道徳教育 / 教育課程 / インクルージョン / 過激主義 |
研究実績の概要 |
2018年度は、WEBで収集できる資料の収集と研究分担者との共有、および現地調査を行った。 「ミュンヘン学校の質と教育研究のための研究所(ISB)」発行の『価値の形成』というハンドブックが基礎資料となるので研究分担者と分担して読み進めている。 2018年度の現地調査はISBに依頼して、価値教育に関する可能な限り多様な校種、多様な取り組みについて調査・参観させていただいた。 ①バイエルン州の「民主主義と寛容のための助言機関」における価値教育の取り組みとして、ドイツにおける過激主義の現状とその防止策についての学校への助言についての聞き取り調査を行った。②バイエルン価値同盟財団への聞き取りを行い、様々な社会団体による価値教育への取り組みの背景についての説明をうけた。③ミュンヘン中心部の中等学校でのシュトライトシュリヒターをはじめとした全校での取り組みについての説明/翌日は、ドイツ語クラス(ドイツ語を母語としないクラス)での多文化間の相互理解のための授業を参観した。④ギムナジウムでの「多様な価値」という有志参加の学校行事を指導している教員に、指導の意図、行事の内容や参加生徒の割合、保護者の意識、活動の成果について聞き取りを行った。⑤失業者やホームレスなどを集めて農業をしたり職業訓練をしながら共同生活をしている村を訪問し、そこの中にある職業訓練校の見学を行うと共に、ギムナジウムのボランティアを受け入れるプログラムについて担当者から聴き取りを行った。⑥ミュンヘン郊外の私立のギムナジウムを訪問し、各人の個性を伸ばすという観点からの価値教育やカリキュラムについての聞き取りを行うとともに、および価値教育の視点での5年生のメディア教育の授業参観を行った。⑦高校生の生徒会活動との関わりで環境問題のデモの取材を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画としては、バイエルン州が推進している価値教育の全体像について把握して道徳の教育課程の構造を明らかにしようとすることを目指しており、初年度の目標は、現地でできるだけ多様な取り組みを見ることであった。今回は、教育関係の役所・研究所だけでなく、財団や共同生活村も聞き取り調査ができた。学校に限っても、都市中心部と近郊・郊外の学校、公立と私立(ドイツでは珍しい)、中等学校およびギムナジウムという生徒の階層が異なる学校を訪問できた。また、統括している機関、役所の職員、教員、生徒、施設職員などからさまざまな立場の人から、価値教育の取り組みに関する意見を聞き、あるいは、実際の授業を複数参観することができた。これらによって、多様な実践や取り組みを見るという所期の目的はかなり果たせた。また、それぞれの場所で、現地ならではの資料を収集することができたことも成果である。 これらをバイエルン州の価値教育の全体像のなかに位置づけつつ、何が不足しているのかを検討することができるので、2019年度の調査対象を考えることが容易になった。
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今後の研究の推進方策 |
今回、訪問した先の特徴を、仮説的に構想している道徳教育の教育課程構造に位置づけてみる。そのうえで、仮説そのものの検証を行い、検証の過程で現地調査で十分聞き込めていなかった部分があれば、メール等で追加調査を行い、その範囲で学会発表を行う。また、メール調査では足りない部分や、さらなる観察や聞き取りが必要なところの絞り込みを行って現地で再調査する。また、まだ十分にカバーできていない実践領域(とくに教科横断的テーマや教科における価値形成)についても現地で授業参観や教員からの聞き取りを行う。 これとは別に、価値教育との関係でインクルーシブ教育に取り組んでいるドイツ全土に広がっている学校連合「柵を越えるまなざし」(Blick ueber den Zaun)の加盟校のなかから、バイエルン州の4校を訪問する。というのも、まず、学校の分岐制度が強く残るバイエルン州でのインクルージョン教育の有り様について知るとともに、校種による(4校は、Grundschule, Hauptschule, Gymnasium, Internationale schuleとすべて校種が異なる)インクルージョン教育の違いを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一に、大学業務の都合と調査・見学先の都合との調整で、3月下旬に調査・訪問を行ったため、2019年度に会計処理を行う分が含まれている。 第二に、研究分担者との日程調整が折り合わず、2人で調査に行くべき所を1人で行くことになったため、研究分担者の国外出張が年度内にできず、持ち越しとなったため。 翌年度も国外調査を行う予定であるが、さらに訪問すべき学校等があるため、研究代表者、研究分担者ともに翌年度2度ないし長期の国外出張を行うので、次年度使用額はすべて使用予定となっている。また、成果を学会発表するので、国内出張としても使用する予定である。
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